転生者は、苦悩する Lv.4【イナズマイレブン】 (ページ3)

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第143話・陸上部の後輩ページ3

「この部室は試合も出来なかったころの俺たちのことも、昔のイナズマイレブンのことも知っている。それにこうして仲間も増えて来た！この部室は雷門イレブンの歴史そのものなんだ。―――俺たちの大事な仲間なんだよ！」
「円堂の言う通りかもしれないな」
「この部室に、全国優勝のトロフィー飾ってやろうぜ！」
「おおっ、それいい考え！」

　円堂の言葉に建て替えに賛成していた一年生たちも、このままがいいと言う。

「私も…このままがいい」

　―――例え…偽りの時間だったとしても、あの人がたった一時(いっとき)でもサッカーをした場所。私がサッカーをする理由の一つ。

　だいぶ長い休憩を終えグラウンドに駆けていく部員たち。夏未は建て替えられると思っていたため「まだここ使うのね」と落胆する。
　グラウンドに向かっている際、校舎から生徒たちのエールが飛び交う。すると風丸が陸上部の子に呼び止められていた。

「風丸」
「あ、Aか」
「どうしたの？」
「ああ、ちょっとな。紹介するよ、陸上部の宮坂だ」
「宮坂了です！」
「…私は―――」

　自己紹介を相手からされた場合、こちらも名乗るのがマナーだと考えたAは名乗ろうとするが。

「もしかして九重先輩ですか！」
「え、」

　食い気味で陸上部の子、風丸の後輩である宮坂がAの名を呼んだ。グイッと顔を近づけて。転生以前好みが褐色肌に移り気味だったAには心中穏やかな心地ではない。

「何で私の名前…」
「だって先輩有名人ですから！風丸さんと付き合ってるって本当ですか！」

「え…？」
「え？！」
「「うえぇぇええええっ？！？！！」」

　突然告げられた宮坂の言葉にAも風丸も驚きを隠せず2人して大きな声を上げる。

「な、ななななにを言って！」
「それ誰が言ってるの！ kwsk！！」
「い、いええ…ただ噂って言うだけで…」

　宮坂の両肩をガッシリと掴み目を吊り上げ黒々としたオーラを醸し出すAに宮坂が引き気味だ。普段サッカー部以外の相手はしないAが宮坂に対して冷たい対応をしないことから風丸の内心ざわついている。

「A、落ち着けよ」
「いや、落ち着くべきは君だよ風丸。手がめっちゃ震えてる！」

　Aに指摘され気付いた風丸は、自身の手を見つめる。震えていることを確認する。
　果たしてこの震えは、Aの反応に対してなのか。照れ隠しなのか、風丸以外は誰も知る由もない。