転生者は、苦悩する Lv.1【イナズマイレブン】 (ページ39)

今日:23 hit、昨日:38 hit、合計:266,838 hit

第035話・一方帝国ではページ39

一方その頃、帝国学園サッカー部のグラウンドでは、帝国イレブンが苛烈な練習を行っていた。
だが、鬼道たちレギュラーメンバーからすれば、日常の出来事であり、当たり前の練習メニューなのだろう。

「鬼道さん！」

高く上げられたフライパスに合わせ鬼道がゴールネットを揺らした。
ベンチに辺見と共に座り、グラウンドの練習風景を見つめる鬼道と辺見。
話題は雷門中との練習試合のことへ。

「鬼道さん雷門中のこと、聞いてますか？」
「奴らがどうした？」
「帝国(ウチ)とやってから、実はかなりすごいチームなんじゃないかって噂が広がってますよ。酷いところになると、帝国が1点に泣いたって話も」

恨み言のように虚空を見つめ睨む辺見に対し鬼道はニヤリと笑い「言わせておけ」と言う。

「俺たちは任務を果たした。それだけだ」
「そうですね」

鬼道の言葉に安心したように少しだけ微笑む辺見だが、
あれ以来雷門への練習試合の申し込みが後を絶たないことも気に入らない様子だ。

「探りを入れたほうがいいですかね？」
「必要ない。すでにネズミは潜り込ませてある」
「流石は鬼道さん。抜かりないですね」

辺見の称賛の言葉を鼻で笑う鬼道。
すると源田も休憩に来たのか、辺見、鬼道の元へとある話題を持ってきた。

「雷門と言えばあの女の噂も聞いたぞ」
「女？」
「ああ」

辺見が首をかし肯定する源田。雷門の女選手と言ったら彼女しかいない。
お下げの黒髪を靡かせ、西洋人形のような端正な顔立ちをした碧眼の少女。

「名前は確か…」
「九重 A」
「鬼道…お前……」
「総帥も気になっている様子でな。少し調べさせてもらった」
「へぇ…総帥も」

目的であった豪炎寺修也だけではなく、
思っても見なかった収獲であった九重Aの存在。
女子でありながら男子にパワー負けも、スピード負けもしていなかった。
実際に彼女のシュートを体験した源田は、彼女の噂は色濃く耳に残っているとか。

「九重のパワーもそうだが、何よりも動きがかなり丁寧だった」
「それは俺も同感だ。まるで乱れがない、演舞を見せられているようだった」

秋が試合当日に言っていた「プレーが丁寧で確実」というのはどうやら帝国選手も感じていたようだ。
中には彼女の洗礼された動きに魅入られていたものもいただろう。

「ふっ、あえて言うならば…『舞日女(まいひめ)』と」

こうしてAの知らぬ間に鬼道から、不明様なことに異名が付けられたのだった。