転生者は、苦悩する Lv.1【イナズマイレブン】 (ページ35)

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閑話・哀れな男の末路ページ35

帝国学園。東京にある男女共学、学力全国1位の名門中の名門校。サッカー部はフットボールフロンティアでは40年間無敗を誇る。その名門校の『総帥』影山零治は今気になることがあった。

　一週間前、7年ぶりに再会した一人の少女のことだ。
　彼女が昨年別の学校へと転校したのは知っていた。自分の調べが甘く彼女に嫌な思いをさせた挙句、雷門中に転校し…サッカー部へと入部して、自身の教え子たちと戦ったと思うと腸が煮えくり返りそうだ。

　彼女がサッカー部に入部したことを知らせて来たのは、雷門へ送り込んでいた冬海だった。名前を聞いてまさかとは思った。

「…はぁ…因果だとでも言うのか」

　7年か――。長いようで短いのか…短いようで長いのか。
　今年で14歳になる娘。随分と母親に似て美人になっていた。祖母がイギリス人で、クォーターだからこそ西洋の人形のように顔が整っており、日本人らしさも残しつつ童顔。また性格も落ち着きのあるものだ。あれではきっとよくモテるだろう――。

　あの娘(こ)に、サッカーは一切関わらせないつもりでいた。何故こうなった……。
　私はもっと完璧にあの娘からサッカーを引き剥がすことが出来たんじゃないか…？
　あの娘にサッカーの刃が向いたら……私はそれこそ正気でいられる気がしない。

「幸…お前との約束は難しいものだな……」

　写真すら残っていない唯一愛した女性を瞼に想い浮かべる。――7年前だ。たった7年だ。その7年で彼女の笑顔すら、忘れてしまった。

　彼女が死んで、サッカーへの復讐心を再び思い出し……あの娘から逃げるように彼女の両親に置いていった。養育費や手紙、学校への推薦も忘れずにすべてを手配した。

　捨てるのであればもっと徹底的に…あの娘が憎しみを覚えるほどに、徹底的に拒絶すればよかったものを…。
　すべてをなくし、友情も絆もすべてを捨てても痛みもしなかった心。だというのに…娘は、娘だけは捨てきれなかった。

　なんて愚かで、哀れなんだろうか――。