1 生活 ページ2
入学式の一時間程前、職員室に呼び出された少女は鞄の持ち手を落ち着き無く握り直しては深呼吸を繰り返していた。
すとんと真っ直ぐ下ろされた髪に春の陽光が照り、その薄紅色が透明度を増して儚げな雰囲気を漂わせる。
「烏丸Aさん」
慌てたように大きく身体を揺らして、彼女は上ずった声で返答した。絹糸のような髪がキラキラと光を反射して彼女の動きを追う。
「もしかしたら顔くらい見たことあるかもしれないけれど、貴方のクラス担任になる神田です。よろしく」
「はいっ…よろしくお願いします」
今度は手本のような斜め30度、腰から真っ直ぐに礼をして見せる。重力に従う髪の隙間から、緊張に滲む表情が見て取れた。
幼い日に父親から施設に預けられ、不幸にも大人のエゴに利用され後遺症を持ったまま入院を続けていた少女。
そんな彼女にとってこれから始まる学校生活というのは、文字通り人生初の体験になる。
常に人に囲まれた空間も、人との関わりにも勿論馴染みがない。
「不安なことはある？」
「…えっと」
言葉を詰まらせる。担任が投げた質問を受け取ったは良いが、彼女の頭には不安に部類される事柄があまりにも多すぎた。
「まぁ、慣れるまでは私に頼ってちょうだい。暫く経てば、クラスの子も助けてくれるだろうし」
クラスの子、他の生徒。それが多くの不安の種だった。
彼女は今年17歳になる。本来は高校二年であるはずの年齢だ。
しかしながら、昨年の秋頃に退院した彼女は、すぐに高校に転入することはしなかった。精神的負担を伴い、何よりも学力的に無謀な判断だったからだ。
だから半年間を知識補強の講義に費やし、この春から新一年生として入学することとなったのだが、本当に他の生徒の学力について行けるのか、周りと歳が違うことで虐げられたりはしないか。
この日が近づく程漠然とした不安は膨らみ、彼女の心を圧迫していた。そんな時、担任が少女の背後に視線を向ける。
「おはようございます」
耳に飛び込んで来たのは、校内に入って初めて聞いた見知った声。息苦しさが消えていく、まるで肺に酸素が送り込まれてきたような。
固まっていた姿が嘘のように、彼女は素早い反応で振り返る。
「おはよう野坂君。紹介するわ、彼は野坂君。生徒会のメンバーとして新入生支援をしてくれているの」
よろしく。そう微笑んだ彼は続けて言った。
「午後から新入生向けの相談会があるから、来ると良いよ」
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橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです！続きを待ってます！(*´ω｀*) (2021年11月3日 4時) (
レス) @page43 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
輝(プロフ) - かなりさん» お返事送れてすみません。いつもコメントありがとうございます！(* ´ ▽ ` *)今後も楽しんでいただけると幸いです。 (2020年7月7日 0時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 更新おつかれさまです！もうドキドキして、ついにしたな〜と思いで嬉しい気持ちでいっぱいです！！これからの、展開がどうなってくるか、楽しみです！！これからも体に気をつけて頑張って下さい！ずっと応援しています！！ (2020年6月21日 13時) (レス) id: 49621f134d (このIDを非表示/違反報告)
輝(プロフ) - かなりさん» コメント毎回ありがとうございます！元気に過ごしてますよー、かなりさんも体調に気を付けて！応援に答えられるよう、頑張ります(*^-^) (2020年6月20日 11時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 更新おつかれさまです！最近体調はいかがですか？私は、この小説がずっと大好きで、心が救われる小説です！！このご時世大変な時なので、あまり無理しないで下さい！これも体に気をつけて頑張って下さい！ずっと応援しています！！ (2020年6月18日 15時) (レス) id: f70c6ae0d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝 | 作成日時：2020年5月2日 12時
