廿参話 ページ26
『鬼狩り様』
その言葉に心臓がどくん、と脈打つ。
そんな言葉知らない、知らないはずなのに何故かそう言い切ることが出来ない。
何より私を見つめる咲子姉さんのその表情が、その言葉を言わせない、とでも言っているようで、私はただただ脈打つ胸を抑えることしか出来なかった。
「A、よく思い出してみて。Aならもう分かっているはずよ。」
(そんなこと言われたって……)
知らないものは知らない。分からないものは分からない、はずなのに。
諭すような姉さんの言葉は、確実に私の外側を取り繕う”何か“を剥がしていく。
(思い出せない、分からない。……思い出したく、ない)
私の中の何かが言う。ここで思い出してしまっては、もうこの幸せな日常には戻ってこられない。また、あの辛い所に戻ってしまう、と。
(あれ……?)
また、ってなんだ?ここが、この幸せな場所が“日常”のはずなんだ。
「ここで戻らなくては、きっと後悔するよ。
―――Aがこれまで進んできた道は、そう簡単に投げ出していいようなものだったの?」
『お前の人生は、たった1人の言葉だけで終わらせられるほどつまらねェものだったのかよ』
ごーんと鐘に打たれたような衝撃が走る。ああ、前にも同じことを言われたな。こんな大事なことを忘れていたなんて、“柱”だっていうのに情けない。
気づくと、辺りは段々と霧がかったようにぼやけていった。もう、この幸せな“夢”が覚めてしまうのだ。
消えゆく景色の中、私は姉さんへ言葉を紡ぐ。
「あのね、姉さん。私、ほんとはずっと、姉さんとこうやって過ごしていたかった。
……だって姉さんのことが、大好きだから」
「うん」
「でもね、私鬼殺隊のことも、その皆のことも、同じくらい大切なの。ここで忘れてしまっては、きっと後悔する」
「……うん」
「だから、もう行かなきゃ。これからどんな辛いことが待っていても、この道を進んでいくって決めたから。
だからね、姉さん。私にこのことを思い出させてくれて、本当にありがとう。
私、今までも、これからも、姉さんが大好きだから」
視界も白くなり始め、姉さんの姿はほとんど見えない。
それでも、綺麗に笑ったように見えた姉さんは昔と全く変わらなくて、どんどんと涙が溢れでる。
「ねえ、姉さん」
ーーーごめんね
最後に呟いたこの言葉は、ちゃんと姉さんに届いたのだろうか。
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あぶらげ(プロフ) - 黒豆粉さん» ありがとうございます！更新も遅れてしまいすみません (2019年11月30日 11時) (
レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげ(プロフ) - りっつーさん» ありがとうございます！ (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - ナニコレ…好きッッッッッ！！！！、！！！！続きが気になる！！！！！更新頑張ってください！！！！応援しています！ (2019年11月24日 18時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
りっつー - ヤバい、好きっす (2019年11月11日 16時) (レス) id: 8fa946d002 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげα(プロフ) - あかさたなさん» ありがとうございます!嬉しいです!! (2019年10月22日 0時) (レス) id: 768a447251 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あぶらげα | 作成日時：2019年9月22日 14時
