出会い【Meet with you…ARS】 (ページ28)

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雅紀sied

ケータイが鳴る。

「だれぇ…」

ただ用もなく、ダラダラしていた俺にはちょっとやかましい。

相手も見ないで電話に出た。

「はぃ…」

返事をするけど帰ってこない返事。

変に思って切ろうかとしたら、小さな小さな音が聞こえた。

『まー、く…くるし、ぃ…』

「和くん！？もしもしっ！どうしたの？！」

『……』

浅い息遣いが聞こえて返事がない。

時より、吐息に混じるようにまー、まー、と呼ぶ声が聞こえる。

「和くん？どこにいるの？！」

カタンと、大きな物音がしてそのあとはいくら呼びかけようとも返事はなかった。

いったい何があったのだろうか。

このままにできるわけもなく、慌てて必要そうなものを掴むと和くんの家に向かった。

咄嗟に乗った自転車で爆走した。

それはもう必死で漕いで漕いで。

和くんの家に着くと電気はついている。

けれど、ドアをガチャガチャ鳴らしてもやっぱり鍵は開いていなくて。

冷静になって考える。

「そうだ、大家さんだ！」

きっとここだろうというところのチャイムを鳴らした。

「はぁいー？」

声がした。

運がいい。

もしかしたら誰もいなかったかもしれない。

「あの、助けてください！」

事情を説明したら、俺の焦った様子もあって、和くんの部屋の鍵を開けてくれた。

「あら、大変！」

大家さんは料理の途中で火がつけっぱなしだったって言って戻っていった。

「和くん！」

ドアを開けて、玄関に入ったら、すぐ目に入った。

台所に倒れこんでる和くんが。

「酷い熱…」

和くんに触れたら体がすごく熱くって。

くったりと気を失っていた。

「布団で寝ようね。」

意識はないけれど、一応確認して押入れを開けて、布団を出させてもらった。

そこにそっと、寝かせる。

なんであんなところに倒れていたんだろう…

「はぁ…はぁ…」

荒い息遣いがとても苦しそうで…

思わず、寝かせた胸元をさする。

眉間に寄ったシワも、いくらか薄くなって。

冷蔵庫を開けさせてもらったら見つけた保冷剤をタオルに包んで水で濡らし…

おでこに乗せてあげたら、いかにも風邪をこじらせた人って感じだな。

ピンク色のほっぺが幼さを強調していて可愛いなんて、ちょっと不謹慎だけど…

早く下がるといいな…

冷たいのが気持ちよかったのかいくらか表情も和らいだ。

きっと、どうしようもなくなって電話してきたのだろう。