出会い【Meet with you…ARS】 (ページ2)

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「卵…初めてのおつかい的な？」

思ったことをそのまま言ったら、顔を赤くして怒られた。

「ち、ちがうもん！…ぃゃ、違います…」

「ふふ、いいよ、卵、大事だったの？」

「はぃ…」

「そっか。卵ね。」

なんだか、卵卵とたまらなく可愛いのだが、いつまで俺の腕に包まれている気だろうか。

「ところで、いつまでもこの体勢だと注目の的かも。」

周囲の人はもう、さっきのハラハラな一件を知らない人たちばかりになっていて、不思議そうな目を向けて通り過ぎていく。

横断歩道挟んで反対側の人からも視線送られてるし…

「あっ、ごめんなさいっ！」

慌てた様子でぴょん！と飛び退いたはいいものの悪い足が邪魔をしてまたバランスを崩す。

「おっと！」

間一髪、受け止めて体を打つのを防いだ。

「ありがとうございます…助けてもらってばっかり…」

「いーって、いーって…気をつけてね。」

「はいっ。」

落ちている杖を持たせてあげると自力で立ち上がった。

俺も服の汚れを払いながら立つとさっき落とした袋も手に持った。

「ところで、初めて卵は？」

「あれ、です…」

そう指差して見ると、横断歩道の真ん中でぺしゃんこになっている透明なパッケージ。

周りには潰れた卵が散乱している。

「４つ入り。安かったのに…」

「もしかして、そこのスーパーの特売？俺もその帰りだよ？」

どうやら、卵を買った帰りらしい。

「初めてアルバイト代入ったから、自分のお金でご飯作ろうと思ったんですけど…目玉焼き、食べたかったなぁ…」

「ふふ、そっか。大事な卵だったんだね。」

なんだか、本当にがっかりしていて、そういえば自分も特売の卵を買ったことを思い出す。

「ね、そんなに食べたかったなら、うちくる？俺も卵買ったし、全部あげちゃうと困るから、一緒に食べようよ。」

今はちょうどお昼頃。

我ながらナイスアイデアだと思った。

「いや、でも…お金払ったのお兄さんだし…」

「あっ、そっかぁ…」

この子が卵を食べたかった理由は美味しいからじゃなくて、初めて自分のお金で買ったからっていう理由の方が強い。

「ごめんね、変に誘っちゃって。」

「あっ、でも…いきたい…」

小さな小さな声でそう言ってくれた。

「えっ、ほんと？」

「いや、迷惑じゃなかったら…」

ぽそっと呟いたから、なんだかんだでこの子がうちに来ることになった。

今日はそんな偶然が起こった日。