Notes【短編集】

花：浦島坂田船 ページ37

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　ん、と差し出された花１輪。何なんだ突然。家に帰ってきたと思えばカバンと一緒に持っていた花。ぽかんと、開いた口を見て笑ってくるけどあなたのせいでこんなブサイクな顔になってるって知ってます？

　「何、」
　「花。」
　「見れば分かるけど。」
　「…お前に。帰り道に売っとるん見つけてAのこと思い出したから。」
　「あ、りがと。」

　もう一度差し出された花を受け取って、どこに飾ろうかと考える。その前に家に花瓶はあっただろうか。まあ、何かしらで代用できるから困らないだろうけど。


＊＊＊

　家に帰ったら甘い香りが漂ってきて、なんか新しい香水でも買ったんかなと同棲してる彼女の顔を思い浮かべながらリビングに入れば大量の花。…何これ。

　「あ、おかえり。ごめんねお花たくさんおいてあって。」
　「それはええけど…、どないしたんこれ。」
　「仕事で預かりてきな？明日には移動させるから今日だけ許して。」

　迷惑かけます、と手を合わせる彼女にまたええよ、大丈夫と声をかけてジャケットを脱いだ。…ジャケットにも花の香りが移ってまうんとちゃうやろか。仕事、と言いながら好きな花に囲まれてる幸せそうな彼女の顔を見たら何でもええかと思ってまうから俺も重症かもしれへんなぁ。

＊＊＊

　なんやそわそわしてる彼女を見て、今日は何かあったっけ…と考えるけど思いつかへん。また俺、忘れとる？…ええ加減愛想つかされるんとちゃうかな。

　「今日、何の日か覚えてる？」
　「…え、」
　「…覚えてないのか。やっぱりね。今日は付き合い始めて４年目だよ。」
　「…あ、」

　そう言えば、そうや。記念日そろそろやなって思ってこの前プレゼント買ったのに忘れ取った。ちょっと待っとって、と声をかけて部屋にプレゼントを取りに行く。

　これ、と手に乗せたんは俺のマークの花がモチーフのピアス。Aに似合うと思って見つけてすぐ買ったやつ。…遅なってもうたけど、これからもよろしく。


＊＊＊

　最近、ライブだ会議だ放送だと忙しそうな彼氏。楽しそうだからちょっとくらい放置されてたって私は平気なんだけど彼氏さんは気にしてるみたい。気にしなくていいのに。

　「ただいま、」
　「おかえり…え、」

　玄関で出迎えれば小さなお花のブーケ。プレゼント、と渡されて反射的に受け取ってしまう。…いい香り、ってそうじゃない。

　「最近忙しいのに俺のこと支えてくれてありがとう。感謝の気持ち。」

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