中也、犬を飼う

子犬が三匹 ページ4

ぱぱっと済ませて早く家に帰ろう
こいつは運転手に預けておくか


「こいつ頼めるか」


「分かりました」


膝の上の子犬を運転手に渡す
相手の腕の中に収まる
がしかし、戻ってきてしまい俺の手の中へ
もう一度やってみるものの結果は同じことに

犬を抱え一旦外に出て窓から運転手へ渡す
成功したかと思ったら暴れまくって
運転手は犬を追うので精一杯になった


「私が行きましょうか…？」


「……さっきからすまねぇな」


「任せてください」


サングラスを外し髪を少しだけ崩し残業後の会社員のような風貌で
ドラッグストアに向かった運転手
中也はそれをただ見ることしか出来なかった
正直とても頼もしかった
膝の上に温もりを感じながら手を伸ばし車の照明を点ける


ちょっと眩しそうな素振りをした後子犬は中也をじっと見つめる
くるんとなったしっぽは右に左に忙しく動いている


先刻まで暗くて良く見えなかったがこいつは日本犬の類だと思う
柴犬なのか……？
明日誰かに聞いてみるか
照明を消し頭を撫でながら外を見てると運転手が帰ってきた


手には大きな荷物をぶら下げている


「これで今日は大丈夫だと思います。
注意点といいますか、やっておくと安心みたいなものがありまして……」


それからも話は続く続く
この運転手、前に子犬を預かったことがあるようで中々詳しい
中也は少し遅れ気味に頷いたり反応している
本で読んでいたためなんとなくは理解していたものの
実際育てるとなると思った以上に難しい


「ありがとな。ほんとに助かった。これで足りるか？」


「お金は大丈夫です。大事に育ててあげてください」


「いや、貰ってくれ。俺からの気持ちだ」


「……ありがとうございます。それでは向かいましょうか」


深夜一時、車は帰路についた
子犬は気持ちよさそうに寝ている


「まじで可愛いんだよなァ……」

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