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三日月はタブレットPCを電源ボタンを軽く一度押して、画面を暗くする。刈谷があっと言うのに被せて、三日月はタブレットPCを鞄にしまいこむ。
「まぁこの映像の中に偶然少年課に引き継いだ、行方不明の少年が映ってまして、これから少年課に」
「待て」
刈谷が三日月の腕を掴んで、引き留める。
三日月は笑いながらその手に自分の掌を重ねる。
「なんですか?」
「その映像を捜査一課に回せ」
九重は背筋に悪寒が走り、隣に立っている三日月を見た。彼女は笑っている。まるで、聖母のように笑っている。でも、柔らかな雰囲気はそのままに、目の奥は冷えきっていた。
「なぜ?」
その声音は淡々としていた。
「あ、Aさん!」
「馬鹿お前、まだ話してるだろ!」
「すみません」
そんな声が聞こえ、三日月が声のした方を見ると、そこには西武蔵野署の毛利と向島がいた。
「刈谷さん、後で捜査一課に直接伺います」
刈谷は眉を寄せたが、情報を提供して貰う側の立場だ。それに毛利と向島が来ている。刈谷は小さく一つ舌打ちをして去っていった。
「渡すんですか」
「ははは、刈谷さんには渡さないよ。渡すなら信頼できる捜一の刑事。情報を回すのは、頭が回る指揮も上手い刑事…私が信頼する人が優先する」
三日月は暗に刈谷を信頼していないことを口にした。九重が追及する前に、毛利と向島が来てしまった。
「三日月さん…と、九重さん。この前は助かりました。あの件は三日月さんの情報がなければ犯人逮捕まで漕ぎ着けませんでした」
「本当に助かりました」
毛利が言うと、向島が頭を下げた。
あ、そういえばと向島が声をあげる。
「Aさん知ってるかもしれないですけど…捕まりましたよ、スタンガンのわいせつ犯」
それを聞いた三日月は、ほっと胸を撫で下ろした。
「あぁ、良かった。あと、一つお願いしたい」
「なんでしょう?」
「西武蔵野署の少年係にこのデータを。引き続き手伝えることがあれば協力しますので」
「任せてください、いつもお世話になってるんで」
彼らは頭を下げて芝浦署から西武蔵野署に戻っていった。
「彼らなら、大丈夫だよ」
「行方不明の少年は…成川ですか」
「…恐らく」
「売買に関わっていると?」
「どこの組かも、今の時点では分からない」
九重の頭をぐしゃぐしゃと撫で回して、三日月はまた笑う。
「そんな顔をするな。少年係には、優秀な人がいるからきっと見つけてくれる。きっと正しい道に戻してくれるよ」
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ルーツ(プロフ) - イマツギさん» コメントありがとうございます! 書き留めていたものをちょくちょく投稿していこうと思っています! 一挙放送楽しみですねぇ(*^-^) (2020年12月28日 17時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
イマツギ(プロフ) - 早く続きが見たいですね!更新頑張ってください! (2020年12月28日 3時) (レス) id: e522761e6b (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» ご愛読していただいてありがとうございます…! 遂に三日月が自分でひいていた境界線を打ち消して一歩前進しました。この話、終わるまで長くなっちゃいそうです(笑)。気長にいきますね! (2020年9月12日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - ルーツさん» 凄い、好き、好きです…!!(語彙力)ドラマは終わっちゃったけど、ほんと、、この小説好きで、ずっと続いて欲しい((。良かった、境界線は、ただの線だもんね…乗り越えられて良かった… (2020年9月6日 21時) (レス) id: 72afcfd334 (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» そう言っていただけると嬉しいです…!! 遅いながらも暇を見つけてちまちま更新していくつもりです! まだしばらく暑いみたいなので気を付けないといけませんね…(苦笑) (2020年8月25日 20時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルーツ | 作成日時:2020年3月9日 19時