たぶん、夢。 (ページ35)

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▽

(うわっ…めっちゃ高級そうじゃない…？)

大谷くんに連れてこられたのは
どう見ても高級そうな個室の焼肉屋さん。

「ねぇ、大谷くん」

「はい？」

「めっちゃ高そうなんだけど…！」

「Aさんはそんなこと
気にしなくていいですよ」

「ええええ、めっちゃ男前…
チケットのお礼になんないじゃん…」

取材の後だったのか、髪の毛もセットされてて
今日もイケメンである。

大谷くんは私がそんなことも知らず、料理を頼んでいく。

「手慣れてるなぁ、
よく誰かと来たりするんだろうな。」

「いや、先輩に一回連れてきてもらっただけですよ。」

「え？…心の声漏れてた？」

「しっかり(笑)」

恥ずかし…何やってるんだ自分。
何か…話題を変えなければ…！

「そういえば、会って話すのは河川敷の時以来かな？」

「そうですね、結構前だなぁ。
Aさんランニングしてますか？」

「…お昼に…してます…」

「(笑)走ってなさそう。」

「いや、２回くらいは走った！」

「２回(笑)。
Aさん仕事忙しそうですもんね～？」

「大谷くんよりは、
忙しくないです…がんばります。」

そんな他愛のない会話をしていると
どう見ても高そうなお肉が運ばれてきた。
いつも行ってる食べ放題の焼肉とはワケが違う。

何回か会って、ごはんを食べたりしたけれど
大谷くんの職業を知ってからは初めてである。

そう思うと飲み物を飲む姿も、
お肉を焼く所作もなんかオーラがある。

(やっぱり住む世界が違うんだな…)

何気ない動作のひとつひとつを見るたびに、
開いていく気がする距離。

(出来れば、ずっと友達でいたいけど…)

私みたいな一般人と一緒にいたら
迷惑が掛かってしまうかもしれない。
そんな思いが頭よぎった。

友達といえども、異性だ。

お互いにそんな気はなくとも
週刊誌に撮られて、根も葉もない記事を書かれて
大谷くんに迷惑をかけてしまうかもしれない。

(こんな平凡なやつと付き合ってる、なんて
記事書かれでもしたら大谷くんに傷がついてしまう。)

「Aさん？食べないと全部食べちゃいますよ？」

首をかしげてそう言う彼を見て思った。

(彼の隣にいるべき人、私じゃないんだ。)

会うのは、今日で最後にしよう

これからは連絡だけにして、

だから、今日だけは
大谷くんと楽しく過ごせるといいな。