後輩。 ページ10
もう話は通っているらしく、私が簡単な自己紹介のあと頭を下げると何十人もの部員が同じタイミングで「しゃーす」と頭を下げたのはなかなかに恐怖であった。
「んじゃ、詳しいことはコイツから聞いてな。この1週間で慣れてや」
「ちっす」
そうコネシマくんが背中を叩いた男子はどうやら中等部の子らしい。
彼が今までマネージャーをしてきたようだ。
コネシマくんが全体に声をかけ練習を開始すると、中等部の彼が側まで来た。
「ショッピって呼ばれてます。先輩はなんて呼べばいいっすか」
「私は桐ヶ谷A。なんでもいいよ、呼びやすいので」
「じゃあ桐ヶ谷先輩って呼びますね。まず時間の説明からしましょか」
少し滑舌が悪い印象の彼の声はなんだか落ち着いて、それでいて説明が分かりやすくて驚いた。
「一番問題なんはスコアっすね……桐ヶ谷先輩あのクソ先輩が強制的に連れてきただけっしょ」
「まあそうだね。サッカーは全然分かんない」
「全くあの人はいつも考えなしに……ああ、先輩が悪いわけじゃないっすよ。俺が教えますから大丈夫っす」
「いやほんとありがとう……こんないい後輩がいながらなんでコネシマくんはああなっちゃったかなぁ」
「いやホンマに」
真顔で返すもんだからつい吹き出す。
「フッ、ショッピくん結構言うねえ」
「先輩こそ大人しそうっすけどコネシマさんに対して辛辣っすね」
「まあ仲は悪くないとこっちは思ってるけどね。仲がいいほどなんちゃらだよ」
「先輩のそういうところが多分あの人も……」
「うん？」
何か言いかけたようだが、上手く聞き取れない。
なんでもないっす、と彼は言って作業に戻った。
「やっぱ二人いると楽っすね。来週から一人にさせんのホンマ申し訳ないです」
「いやーまあ任されちゃったからには出来る限りやるよ。ところでいつスコアの付け方聞けばいいっすかね？」
「なんすか、俺の真似っすか？」
そうっすよ、と返すとショッピくんは少し口角を上げた。
「そうっすね、部活終わったら暇ですか？この1週間できれば部活後に教えればいいと思うんすけど」
「お、いいっすね。ニートだから大丈夫。お手柔らかに」
こうしてショッピくんに教えてもらうことになった。
でもやっぱりコネシマくんには腹が立ったので、ショッピくんと私にガリ○リくんを奢ってもらう約束をこじつけた。
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作者名：にわとりチキン | 作成日時：2019年4月27日 9時
