食害。 ページ8
あれから私はよくコネシマくんと喋るようになった。
もちろん幻術を使ってだが(女子が怖すぎて)、なんなら昼も一緒に食べる。
彼曰く食害を免れるのに私は素晴らしい才能があるということだ。
はて食害とは、と思いながら今日も裏庭でパンを食べていた。
コネシマくんはいないため、魔法はかけていない。
今日は他のメンツと食べるらしく、私の友達はお弁当勢のため私は一人で購買に行き、近くのベンチで一人で食べていた。
いかんせんこの校舎は広く、購買から教室で食べる友人の元まで戻るとなるとしんどい。
お腹も空いていたので、一人で食べることになったのだ。
断じて。断じてぼっちなわけではない。
「だからどっか行ってゾムくん」
そう、そんな私の前に出現したのは大量のパンを持ったゾムくんである。
それを一人で食べるのか、と呑気に引いていたのだが、彼は何も言わずにパンを私に差し出した。
「え、くれんの？」
「前に色々あったからな、その詫びや。一緒に食おうや」
そう言ってゾムくんは隣にどかりと座る。
慌てて幻術を展開した。
彼は少し笑ってパンの袋を開ける。
「じゃあありがたく…ちょうど金欠だったんだよね。パン一個しか買えなくて」
「じゃあもっと食べ。たくさんあるで」
「欲しい欲しい」
そういって調子に乗ってパクパク食べていたのだが、5個ぐらいでキツくなってきた。
隣を見るとまだまだあるパン。
胃袋が気になるくらいには食べてるゾムくん。
見ててお腹が苦しくなる。
「なんや、食べるの遅なってきてんで。もっと食えや」
彼は笑ってパンを差し出してくる。
ただで貰えるものは断れない精神の私は苦しい苦しいと思いながら一生懸命口に入れた。
ふとゾムくんが手を止めていることに気付く。
「……なに？」
「いや、俺人が食べてんの見るんが好きやねん。特に苦しそうに食べてんのホンマ興奮するわぁ」
普通に引いた。
「キショい」
「ん？おかわりか？」
「いや、なんでもないです……」
完全に前とは立場が逆だ。
コネシマくんが言っていたことを私はようやく理解した。
食害だこれは。
うぷ、と口元を抑えたところで予鈴が鳴った。
「うぷ……はあ、急がなきゃ。じゃあねゾムくん」
「あ、おい待てや！これ食べかけやぞ！！」
「もう無理っす！！」
今回ばかりは予鈴に感謝だ。
ようやく逃げれたが、走ると胃が重くて吐きそうだ。
ゾムくんが追ってきている気がするので無理してでも教室まで走った。
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作者名：にわとりチキン | 作成日時：2019年4月27日 9時
