埼玉合宿 最終日 ページ45
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「Aさんが苦しがってます」
「うお！そうか！ごめん！！！」
パッと手を離されて開放されると、Aさん大丈夫ですか？と私の肩を持って支えてくれる赤葦が、咳き込む私の顔を覗き込む。
「お宅のエースに殺されるところだったんですけど！？」
「すみません。目を離した隙に」
Aさんも最後まで気を抜かないでくださいと注意してくる赤葦に、大型犬の手網は飼い主が責任もって握ってください！と訴える。
「っなぁ！俺たち次はいつ会える！？」
「春高予選ですね」
その前に練習試合が入れば会うかもしれませんが…と、なぜか主将にスケジュールを教えてあげる後輩。
まだ先だなぁとしょぼんとする木兎を見て、あっという間だよと子どもをあやすように私が頭を撫でると、なんだか木兎に耳としっぽが見えてきてしまう。
もっと…と大きな体を小さく縮め込む木兎に、可愛いなぁと思わず呟くと、赤葦がなぜかスススと頭を下げて近づいてきた。
「え、なに？」
コワイ…と若干引いていると、俺にはしてくれないんですか？と赤葦が潤んだ瞳で上目遣いをして私を見る。
急に年下感出してきちゃって…と呆れるのとは裏腹に、私は可愛いお願いをしてくる赤葦の頭をふわふわ撫でる。
「甘えてくるなんて珍しい。」
たまには可愛いことするんだねと笑ってしまうと、冗談のつもりでお願いしたらしい赤葦は、本当にしてくれるんですね…と驚いたような顔で少しずつ頬を赤らめる。
「…いーなー赤葦。」
「木兎にもやったでしょ」
「A、いつもは俺だけにすんじゃん！」
なんで赤葦までーとぷりぷりヤキモチを焼いているらしい木兎に困っていると、ではまたといつもより良い笑顔で赤葦が笑うと、木兎を梟谷の集団の方へ連れていった。
その後、強羅や小鹿野ともお別れをし、マネージャー同士で最後の最後に集まってお別れのハグをし終わると、私がバスに乗る寸前、黒尾と澤村が二人で残っている姿を見つける。
「次会う時は全国でな」
そう笑う黒尾に強く頷く澤村は、菅ちゃんに呼ばれてバスに向かって走り出し、黒尾もそれを見送ると、こちらに向かってゆっくりと歩いてきた。
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作者名：西川あや | 作成日時：2024年2月21日 11時
