埼玉合宿 初日 ページ15
◇◇
「やって来ました埼玉ー！」
長時間のバスの拘束に耐え、降りてすぐ連なる山に向かって叫べば、荷物早く降ろせと後ろから降りてきた夜久にぽかんと頭を叩かれる。
「…帰りたい」
「はいはい、あと6日後ね」
ここ虫ばっかでムカつくとトボトボ歩いて呟く研磨に、私がそう言って研磨の背中を押してあげると、このやり取り久しぶりに見たな〜！と夜久が笑う。
「っAさーん！」
手を振ってこちらに向かってくる真子ちゃんにてをふりかえしていると、案内役として小鹿野と森然の数人の子たちと合流する。
女子部屋去年と一緒だねと話しながら荷物を床に降ろした後、烏野は何時に到着予定なのか真子ちゃんに聞く。
「あと30分くらいで着くと
潔子さんから連絡ありました！」
梟谷はAさんたちが到着する10分前くらいに来ましたよと教えてくれる真子ちゃん。
そっか〜今年は梟谷に負けたかと、パーキングでトイレに籠ったきり、集合時間をオーバーしたリエーフを思い出す。
「あっ、烏野のお迎えと案内についてなんですけど、
音駒の皆さんにお願いしてもいいですか？」
監督たちの提案で既に準備のできている森然と生川が先に試合を始めることになったので、梟谷から審判を出す形にしたくてと言う真子ちゃんに、私は了解と言って黒尾に連絡した。
◇
「あれって東京タワー？！」
そんな翔陽くんの元気な声を聞いて、私も東京に来たばっかの頃はあんなんだったなと昔のことを思い出して笑う。
マネの部屋はこっちと、入口を入ってすぐに男子たちと別れ、私は仁花ちゃんと潔子ちゃんを案内した。
「二人はよく東京来るの？」
「小学生の時に家族と高尾山に登りに行ったくらいかな」
「アクティブだね潔子ちゃん」
山なら宮城にもあるじゃんと笑うと、仁花ちゃんが東京に住んでるのカッコイイですとよくわからないことを言って褒めてくれる。
「都会の女の子は池袋とかで遊ぶんですか？」
「え、うん？たまにね」
私の最寄りからだと行きにくいけど、都会と言ったら銀座とか六本木に憧れるんじゃないの？と私が言うと、場所によって違いがあるんですねと興味深そうに首を傾げる仁花ちゃん。
「あはは。じゃあ今度、3人で東京観光しない？」
来てくれたらいくらでも案内するよと準備する二人に私が言えば、いつ行こうかと早速作戦を立て始めた。
◇
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作者名：西川あや | 作成日時：2024年2月21日 11時
