おばけ ページ11
◇
「すごい声でしたね！」
「芝山、そんな明るく言わないで…」
声をかけてきたのは黒尾だったが、部室棟まで案内するため一年生達を連れて歩いていたらしく、私は黒尾とその御一行に恥ずかしい場面を目撃されてしまう。
「だ、だって部室棟のお化けの話お昼に聞いたから」
ｽﾐﾏｾﾝ、ｽﾐﾏｾﾝと謝罪を繰り返す私を見て、こんな真昼間から怖がっててどうすんだと黒尾が溜息を着く。
「Aさん！俺が帰り送ってあげようか？」
「っあ！だめだよリエーフ！
先輩には敬語使わなきゃ！」
そう一年生たちが何やら話しているが、私は自分のあまりの不甲斐なさにショックを受けていた。
「ひとまず部室行くぞ」
Aはどうする？と聞いてくる黒尾に、ぜひ着いていかせてくださいと返事をしようとした途端、男子バレー部が使っている部室から独特な叫び声が聞こえてきた。
「い、今の声って…」
「山本のだな」
虎が、幽霊に、追いかけられている。
そう私が結論付けて部室に走り出そうとすると、黒尾が急に私の腕を掴み、勢いよく転けそうになる。
「お前はここにいろよ」
ただのゴキブリとかかもしれねぇだろと先に走り出してしまう黒尾は、一年生たちにも待つよう指示を出し、部室棟へ向かった。
・
「黒尾さんってカッコイイっすね！」
「う、うん。僕も今そう思ってた」
Aさんのこと引き止めた時、ドキッとしちゃったと頬を染めて話す芝山に、大丈夫ですかねと冷静に部室を眺める手白。
私は今部室で何が起きているのか考えるだけで泡を吹きそうだっていうのに。
◇
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
