県立烏野高等学校、事務職員です。【２】

059　勧誘 ページ9

「うわっ、びっくりした。……え、どうしたの？」


　風呂から上がり、脱衣場で着替えてドアを開けると日向くんが突っ立ってた。

　いや、ここ女風呂の前ですが。


　「Aさん！ トランプしませんか！」

　「と、トランプ……？」

　「今、みんなでトランプしてて！ 田中さんがAさんを呼んで来いって！」

　「だからここで待ってたの……？」

　「はい！」



　キラキラの笑顔でこっちを見る日向くん。

　いやちょっと可愛いけど。



　「……日向くん、あのね、女性がお風呂入ってるときに風呂場の前で待つのはちょっと辞めとこうか」

　「は、ほあっ！ す、すみませんッ！！」



　何の気なしに彼は私を待っていたんだろうが、風呂を待たれるのは少し恥ずかしい。

　彼に優しく注意すると、彼も自分のしてたことに気付いて顔を赤くして謝った。

　まあ、他の人にはやらないようにね。



　「Aさん！ トランプしましょうよー！」

　「いいけど、遅くまではダメだよ？」

　「やったー！」


　ぴょんぴょんと飛び跳ねる日向くん。

　犬に懐かれたみたいで悪い気はしないよね。



　「じゃあ荷物置いてから行くから」

　「分かりました！ 俺先に戻ってます！」



　日向くんと別れ、部屋に一度戻る。

　指導すべき立場がこんなことしてていいのかって思うところもあるけど、少しならいいでしょ。

　皆とコミュニケーションをとることも必要だよ。


　髪は、ちゃんと乾いてないけどいつもそうだしいっか。

　一応肩にタオルだけかけておこう。

　メガネないけど、まあトランプくらいなら何とかなるか。



　携帯を持ち、その他の貴重品は部屋の中の金庫に引き続き入れておく。

　戸を閉めてトランプが開催されている部屋へ行く。

　そんな夜更かしする気はないし、させる気もないけど23時ぐらいには寝れればいいかな。




　なんか、修学旅行みたいでちょっと楽しい。

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