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第十四波 ページ15

「……首相」
秘書である片岡が、不安そうな眼差しで見つめる先には、一枚の報告書に頭を抱え、目を見開いた浅野が居た。
まずい。非常にまずい。「中国軍の日本軍及び日本人居留民に対する攻撃」の文字が大きく見えるような気がした。新聞は、これを「北支事変」「日華事変」と称した。
これで、和平はほぼ白紙に戻ったも同然。
「…お互いに宣戦布告はしていないので、まだ戦争とは言いませんが」
「絶対に宣戦布告してはいかん」
ぽつりと呟いた片岡に、やや強めの声の声で言った。
宣戦布告しては、国際法で第三国は戦争中の国に軍事的援助が出来なくなる。世界からの孤立だけは何としてでも避けたいーーーー。
其処はどうにかできる。だが、だが…。
このまま抗日運動が収まるとも思えない。
浅野は書類を机の端にやり、再び頭を抱えた。


変わって、軍最高司令官である徳川は呉工廠を訪れていた。
「中々の出来じゃないか」
「はっ、恐縮です…」
案内で付いていた、白い二種軍服に身を包んだ将校が頭を下げる。彼が見ていたのは、船___の模型。とある民間企業からの案である斜め飛行甲板を搭載した、空母「飛天」である。”来るべきその時”に備え、徳川が造らせたものであった。

『貴方ならもうおわかりのはず。軍は武器を作りたい。しかし日本に、資源は少ない』

吉良殿の言葉が脳裏でリピートされる。
…互いに宣戦布告し、此方の領土領海が増えれば?
資源。そう、資源が手に入る。
資源が手に入れば弾薬、糧秣、艦艇が増産出来る。
世界に日本の技術を誇示できる。
今迄考えもしなかったそんな野望までが心の隅を陣取っている。
…吉良殿、貴方は上手いな。
乾いた唇を舌で湿らせながら、内心呟いた。

徳川の言う「来たるべきその時」は、
1939年…北支事変から2年後に、やって来た。

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嵩画鯉城@トラ!トラ!トラ!(プロフ) - 月読命さん» ありがとうございます(o^^o) そうなんですね〜、死後百年ですか…この小説の舞台は若干微妙な年代なので、その辺り気を付けて書いていこうと思います。 (2017年10月6日 18時) (レス) id: 3ce9c05f06 (このIDを非表示/違反報告)
月読命 - 更新がんばってください!ちなみに歴史上の人物の場合、死後およそ100年で名前をかってに使われない権利みたいなのが消えるみたいです。 (2017年10月2日 20時) (レス) id: 3990fcd378 (このIDを非表示/違反報告)
蘭秀@ニイタカヤマノボレ(プロフ) - あんこ(ろ)餅さん» コメントありがとうございます。歴史上の人物を使用する場合はオリフラを外す必要はない、と聞いたのですが…。ちなみにww2の内容については実在する団体は一切使用しておりません。 (2017年6月19日 7時) (レス) id: c435ca72cc (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(ろ)餅 - これはオリジナルですか?実在する団体などを使用してる場合はオリジナルフラグを外してくださいね (2017年6月19日 7時) (レス) id: db0d61df1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘭秀、鯉城 x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年6月11日 19時

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