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第十三波 ページ14

「これは長官」
国会内の廊下を歩いていた徳川は、背後から呼びかけられ、振り向いた。
「おお、吉良殿」
さも驚いたかのように返事をするが、先程からこちらを伺われていたのを知っているので複雑な気持ちになる。
「少しだけお時間よろしいか」
小声でそう言われ、反射的に頷く。それを見て、人目がないことを確認した吉良は、徳川と共にそばの小部屋に入った。
「突然部屋に連れ込むような真似をして申し訳ありません」
二人が椅子に腰掛けたところで、吉良はそう前置きして話し始めた。
「長官。伺った限りだと軍の内部は随分荒れているようですね。皆に実力を認められている貴方が抑えきれない、などと仰るとは」
「…はい。恥ずかしい話ながら。しかし軍を率いる身としては和平は最早無理だと見ている部分もありまして」
それを聞き、吉良は満足そうに笑った。
「なるほど。面白いお話感謝します。野党の党首としては貴方が本当に政権から独立した存在か確かめたかったもので。失礼いたしました」
吉良は深々と頭を下げる。慌てて顔を上げるよう言ってから、徳川は尋ねた。
「吉良殿。わざわざ部屋に入っての話、これだけではないのでしょう?」
吉良は大きく頷いた。彼の口角が、少しだけ上がった。
「察しが良いお方だ。…単刀直入に言います。私と、手を組みませんか」
徳川は眉をピクリと動かす。流石に思いもよらない言葉だった。
「…手を組む、と?吉良殿の党に有利になる発言でもしろと言うことでしょうか?」
「それは大変ありがたいが、主題はそうではなく――浅野政権を倒したいのです」
徳川は、正面の相手に悟られぬよう深呼吸をした。政権を倒す、というのか。つまり軍の力でクーデターをしろと?
彼の戸惑いを見抜いたように、吉良は言葉を付け加えた。
「軍事力を用いるわけではありません。やるなら正々堂々と。…少なくとも見た目上は」
なるほど、と徳川は頷いた。吉良の考えがだいぶ読めた気がした。
「話はわかりました。で、それにより軍には何の利益が?」
「貴方ならもうおわかりのはず。軍は武器を作りたい。しかし日本に、資源は少ない」
心底を覗かれたかのような吉良の発言に、徳川は目を見開く。それを誤魔化しながら口を開こうとしたが、吉良が先に言葉を発した。
「お返事は後日で結構です。もし拒否なさるなら、今の話は全てお忘れ下さい。」
そう言うと、吉良は一礼して部屋を出て行った。

一人になった部屋で、徳川はしばらく微動だにせず座っていた。

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嵩画鯉城@トラ!トラ!トラ!(プロフ) - 月読命さん» ありがとうございます(o^^o) そうなんですね〜、死後百年ですか…この小説の舞台は若干微妙な年代なので、その辺り気を付けて書いていこうと思います。 (2017年10月6日 18時) (レス) id: 3ce9c05f06 (このIDを非表示/違反報告)
月読命 - 更新がんばってください!ちなみに歴史上の人物の場合、死後およそ100年で名前をかってに使われない権利みたいなのが消えるみたいです。 (2017年10月2日 20時) (レス) id: 3990fcd378 (このIDを非表示/違反報告)
蘭秀@ニイタカヤマノボレ(プロフ) - あんこ(ろ)餅さん» コメントありがとうございます。歴史上の人物を使用する場合はオリフラを外す必要はない、と聞いたのですが…。ちなみにww2の内容については実在する団体は一切使用しておりません。 (2017年6月19日 7時) (レス) id: c435ca72cc (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(ろ)餅 - これはオリジナルですか?実在する団体などを使用してる場合はオリジナルフラグを外してくださいね (2017年6月19日 7時) (レス) id: db0d61df1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘭秀、鯉城 x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年6月11日 19時

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