検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:6,538 hit

第十一波 ページ12

あっという間に次の日を迎えた。
午前6時、予定通り臨時国会は開会された。唐突な召集に戸惑う議員たちの前に、まず浅野が進み出る。
「朝早くから集まっていただいたこと、感謝します。今回緊急で国会を開いた訳ですが…」
ここで浅野はわずかに言い淀んだ。それを察した野党席からは「どうした」「早く言え」という野次が容赦なく飛ぶ。
彼は覚悟を決め、もう一度口を開いた。
「一昨日午後盧溝橋東北方で軍事演習をしていた支那駐屯軍が中国の国民革命軍から発砲を受けました」
そこから始め昨日と同じように状況を話す。
「…本日2時、停戦協定を結び5時までには双方撤退予定でしたが連絡不備のため未だ撤退は完了しておりません」
そこまで言い浅野は演壇から離れたが、暫く誰も声をあげない。既に知っていた者は浅野の話した新たな状況に頭を抱えたし、何も知らなかった者は突然の報告に呆然とした。
暫くの沈黙の後、漸く議員の中から手が上がった。浅野が最も苦手とする人物である。前に出てきた吉良は激しい論調で話し始めた。
「首相。今回の事件で最早連合国との和平は無理だとお分かりになったはず。まさか、これでも和平交渉を続けるとおっしゃるか」
全くもって予想通りの吉良の言葉に浅野は再び立ち上がった。
「難しい状況であることは重々承知の上ながら、私は最後まで和平に力を尽くしたい。なんとか時間を稼ぎ欧州の荒れが治ることを待つことができれば、それが最善だと。そう信じています」
冷静に答えた浅野に、吉良はこれ見よがしに舌打ちをした。
「…貴方とはどうも話が通じない。徳川長官がお越しのようですし話をお聞きしたいのだが」
それに答え、徳川綱吉が前に進み出た。彼は国会議員ではないが、軍を統べるものとして今日は特別に呼ばれていた。
「長官。今回の事件を受け軍としての見解を」
そう言った吉良に綱吉は小さく頷き、話し始める。
「今回の件については中国にいた軍部を抑えきれなかったのに問題はあります。しかし中国による電話回線の切断などを顧みるに、中国が意図的に起こしたことは明白。軍内でも中国との戦争を望む声が強く上がっています。この声を抑え込み続けるには、私は最早力不足ではないかと」
徳川長官に力不足なら誰にも無理だな、と浅野は心の中でぼやく。
――軍内までそう荒れているとなれば、思っていたよりさらに深刻な事態かもしれない
浅野をはじめとする議員らは、事態の深刻さに改めて向き合わされた。

第十二波→←第十波



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (17 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
9人がお気に入り
設定タグ:忠臣蔵 , WW2 , 合作
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

嵩画鯉城@トラ!トラ!トラ!(プロフ) - 月読命さん» ありがとうございます(o^^o) そうなんですね〜、死後百年ですか…この小説の舞台は若干微妙な年代なので、その辺り気を付けて書いていこうと思います。 (2017年10月6日 18時) (レス) id: 3ce9c05f06 (このIDを非表示/違反報告)
月読命 - 更新がんばってください!ちなみに歴史上の人物の場合、死後およそ100年で名前をかってに使われない権利みたいなのが消えるみたいです。 (2017年10月2日 20時) (レス) id: 3990fcd378 (このIDを非表示/違反報告)
蘭秀@ニイタカヤマノボレ(プロフ) - あんこ(ろ)餅さん» コメントありがとうございます。歴史上の人物を使用する場合はオリフラを外す必要はない、と聞いたのですが…。ちなみにww2の内容については実在する団体は一切使用しておりません。 (2017年6月19日 7時) (レス) id: c435ca72cc (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(ろ)餅 - これはオリジナルですか?実在する団体などを使用してる場合はオリジナルフラグを外してくださいね (2017年6月19日 7時) (レス) id: db0d61df1d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:蘭秀、鯉城 x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年6月11日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。