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第十七波 ページ18

「今の総理はいつもいつも『全力で対処します』ばかり。それを本当に信用して良いのか!我らが日本は明治の時代、清に勝った。ロシアにも勝った。それなのに今のこの現状はどういうことだ?列強のご機嫌伺いをしてばかり、何にもできやしないではないか」

堂々とした演説に空気が震える。そうだ、という声が随所から上がる。
大仰な身振りを交えて民衆に語りかける吉良の言葉に、いつしか皆が引き込まれていた。

「大変な状況と口では言いながら呑気に国会を解散し、こうして選挙をしている。諸君らはそんな浅野総理をどう思う?あんな腰抜けに国政を任せ続ければ、この大日本帝国は気がついた時には何処ぞの国の植民地だ。それを傍観して何が日本国民だ。二千六百年の伝統のある我が国の誇りを失ってはならない!」

人々の興奮は更に高まった。吉良に同調する声が巻き起こる。

そんな中、ある人がポツリと呟いた。

「なあ。…浅野総理が連合軍方と繋がっているとかいう噂、知ってるか?」

周りの騒がしさにも関わらず、その声はよく響いた。彼の周囲にいた人たちが一斉にそちらを注視する。注目を集めてしまったことに照れたのか彼は少し言い澱んだが、すぐに続けた。

「自分もよく知らないんだが、ごくごく内密にアメリカの使節と面会したんだとか」
「…そうだとすれば、首相の優柔不断で八方美人な態度も説明がつく。しかしまさか…」

流石に誰も簡単に鵜呑みにはしない。しかしざわめきは収まらなかった。



「火のないところに煙は立たぬ…人々はその言葉をよく知っているはずだ」
演説を終え党事務所に戻った吉良は、僅かに口角を上げて呟いた。

火元のわからない煙は、着実に広がっていく。
黒いそれに覆われた場所からは少し遠くを望むことさえできず、其処は暗闇であった。しかし視界を遮るものに人々は気付かない。ただいつも通りの日々を送っていた。
煙を煽った当人たちにでさえ、それが何処までゆくのか予想しようがなかった。

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嵩画鯉城@トラ!トラ!トラ!(プロフ) - 月読命さん» ありがとうございます(o^^o) そうなんですね〜、死後百年ですか…この小説の舞台は若干微妙な年代なので、その辺り気を付けて書いていこうと思います。 (2017年10月6日 18時) (レス) id: 3ce9c05f06 (このIDを非表示/違反報告)
月読命 - 更新がんばってください!ちなみに歴史上の人物の場合、死後およそ100年で名前をかってに使われない権利みたいなのが消えるみたいです。 (2017年10月2日 20時) (レス) id: 3990fcd378 (このIDを非表示/違反報告)
蘭秀@ニイタカヤマノボレ(プロフ) - あんこ(ろ)餅さん» コメントありがとうございます。歴史上の人物を使用する場合はオリフラを外す必要はない、と聞いたのですが…。ちなみにww2の内容については実在する団体は一切使用しておりません。 (2017年6月19日 7時) (レス) id: c435ca72cc (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(ろ)餅 - これはオリジナルですか?実在する団体などを使用してる場合はオリジナルフラグを外してくださいね (2017年6月19日 7時) (レス) id: db0d61df1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘭秀、鯉城 x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年6月11日 19時

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