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第零波 ページ1

――元禄十六年二月四日。

 「内匠儀、勅使ご馳走の御用を仰せ付け置かる。その上時節柄殿中を憚らず不届の仕方に付いてお仕置き仰せ付けらるに付き、上野儀お構いなしとさしおかれ候ところ、主人の仇を報じ候と申し立て四十六人が徒党致し上野宅え押し込み飛び道具など持ち出し上野を討ち候始末。公儀を恐れざる段重々不届きに候、これに依り切腹申し付ける」

そう言い、荒木十右衛門は手に持っていた書状を彼らに見せた。
「切腹という寛大な御処置、有り難くお受けいたしまする」
代表して大石がそう答え頭を下げると、彼の後ろに控えていた十六名も一斉に平伏した。
それからすぐ、畳の上に木綿の大風呂敷を敷き、場所が整えられた。検死役であった荒木が座敷に座り、準備が完了した。
「大石内蔵助殿」
名を呼ばれ、彼は立ち上がった。同志らに頭を下げ、歩き出す。
「皆、追っ付け参ります」
誰かが、そう彼の背後で言った。


落ち着いた様子で切腹の座に着いた大石は、「お手を煩わせます」と介錯人に声を掛ける。それに介錯人、安場一平は緊張した面持ちで頭を下げた。大石は三宝から短刀を取り上げ、ゆっくりと目を閉じる。そして短刀を腹に突き立てた。
瞬間、彼の頭に様々な想いが浮かんだ。家族への思い、仲間たちへの思い、主君への思い。そして生への未練。
それらはやがて一つにまとまり、彼の脳内を占める。
――もし再び生を得ることがあれば、殿とも同志らともずっと平和に暮らしたい

たった一つのその願いが叶うよう祈りながら、彼は首を、安場の振り下ろした刃に差し出した。


「極楽の 道はひとすぢ 君ともに 阿弥陀をそへて 四十八人」

大石内蔵助良雄 享年四十五

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嵩画鯉城@トラ!トラ!トラ!(プロフ) - 月読命さん» ありがとうございます(o^^o) そうなんですね〜、死後百年ですか…この小説の舞台は若干微妙な年代なので、その辺り気を付けて書いていこうと思います。 (2017年10月6日 18時) (レス) id: 3ce9c05f06 (このIDを非表示/違反報告)
月読命 - 更新がんばってください!ちなみに歴史上の人物の場合、死後およそ100年で名前をかってに使われない権利みたいなのが消えるみたいです。 (2017年10月2日 20時) (レス) id: 3990fcd378 (このIDを非表示/違反報告)
蘭秀@ニイタカヤマノボレ(プロフ) - あんこ(ろ)餅さん» コメントありがとうございます。歴史上の人物を使用する場合はオリフラを外す必要はない、と聞いたのですが…。ちなみにww2の内容については実在する団体は一切使用しておりません。 (2017年6月19日 7時) (レス) id: c435ca72cc (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(ろ)餅 - これはオリジナルですか?実在する団体などを使用してる場合はオリジナルフラグを外してくださいね (2017年6月19日 7時) (レス) id: db0d61df1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘭秀、鯉城 x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年6月11日 19時

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