離れていても ページ33
「忘れモンねぇ？」
「ま、まって！もう一回確認するから！」
キャリーケースから荷物を出すの
これで何回目だッ！
バタバタ動く私を、千冬は何も言わずに待っててくれてる。
「ごめん！大丈夫！」
「ん、行くか」
私の手からキャリーを奪い、もう片方の腕が、私の手を引く。
この温もりから、一年離れる。
何でよりによって、私が選ばれたんだろ…。
独身で、転勤させやすいからか…。
「空港に一生つかなきゃいいのに…」
「攫ってやろうか？このまま」
「会社クビになっちゃうよ」
「俺んとこに永久就職すれば？」
「……ななな！！なに言ってんの！！」
「あー！顔真っ赤ー！かーわいっ！」
信号待ちで、私の顔を覗き込んで来る千冬は悪い笑顔。
最近意地悪だコイツッ！
「あっち行け！」
「可愛い顔みーせーてっ！」
って、攻防戦を続けていると、後ろからプーッとクラクションが。
二人で顔を合わせてフッて笑って、千冬が車を走らせた。
一年の辛抱。
一年経てば、またこの幸せな日常に戻れるんだ。
「なぁ」
「ん？」
空港のベンチで飛行機の時間を待つ。
コーヒーを前屈みで握りしめていた千冬が
ゆっくり私を振り返った。
「帰って来たら、一緒に住まねぇ？」
「い、いいの！？」
「そんな驚く？」
あははって千冬が私の髪を梳く。
「私で良ければ…」
「ご褒美ぐらいねぇとな」
「私と一緒に住むって、ご褒美になる…？」
「Aが傍にいるだけで、毎日がご褒美だったよ」
込み上げてくる涙を必死に我慢。
私の頭を引き寄せ、千冬の肩へと導かれた。
「辛い事、苦しい事があった時は思い出して。離れてても、Aには俺がいるから」
誰よりも強い味方。
永遠の別れでもないのに、
千冬が優しすぎるせいで、耐えきれず涙が溢れた。
「うん…っ、でもさみしい…」
「俺も…、けど忘れないで？ずっと好きだから」
「私もだいすき…」
「泣くなよ」
やれやれって感じで涙を拭きながら、笑ってる。
その時、博多行きのアナウンスが流れて来て、二人の動きが止まった。
「頑張って来い」
そう言い立ち上がって、頭をポンポン。
ありがとうの意味も込めて、千冬の首に腕を巻き付け、キスをした。
驚いていたけど、すぐに腰を抱き寄せ、深いキスに変わる。
最後は笑顔で手を振った。
こうして、私たちの遠距離生活が幕を開けた。
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みい - 面白かったです！ (5月1日 14時) (
レス) @page50 id: 957bb83be5 (このIDを非表示/違反報告)
えりちゃん - はじめまして！千冬の小説の中でいちばん大好きです♡︎ʾʾ (6月5日 9時) (レス) @page50 id: 84c92b84c7 (このIDを非表示/違反報告)
いぬ？ - ずっと泣いてました。涙腺しにました。千冬くんのこともっと好きになりました。 (2022年11月5日 12時) (レス) @page50 id: dc4cbab92b (このIDを非表示/違反報告)
華ノ子(プロフ) - 泣きました〜( ;ᯅ; )matsuriさんの作品本当に好きです… (2022年7月29日 2時) (レス) @page50 id: 71c3cf5627 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃみさん(プロフ) - 本当にいつもどの作品もmatsuriさまのは素晴らしいです。もう素敵すぎて逆にしんどいです笑 三ツ谷読みたいので、次作楽しみにしております！でもたまに灰谷兄弟の更新もお願いします笑 (2022年7月7日 13時) (レス) @page50 id: e87bae8502 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：matsuri
| 作成日時：2022年5月23日 18時
