ツンデレラ【松野千冬】

幸せのお裾分け ページ16

あれから、千冬を避ける日々。




何度か連絡が来て、当たり障りなく返事を返す。
電話も何回かに一回しか出なかったし、
ご飯の誘いも、何度か断れば、千冬からの連絡も次第になくなった。




千冬がいない毎日はつまらない。




仕事中もなんかぼーっとしちゃってミス連発。




商談が終わって帰宅途中、突然の雷雨に襲われるし、

パスモで支払しようとすれば、残高不足でレジ詰らせるし

洋服にタグつけたまま出勤しちゃうし

道端で急に知らないおじいちゃんに「邪魔だ！」って怒鳴られるし

好きなドラマ録画し忘れるしで



悉くついてない。



千冬が私の運気を上げてくれてたんじゃないかってくらいに。
何もかもが上手く行かない。



千冬は元気にしてるかな？
沙羅ちゃんと幸せな毎日を送ってるかな？



そんな事を考え、たまにポタッと涙が零れる。



完全に情緒不安定だ。



会社の人からも、
「最近元気ないけど、大丈夫？」なんて、心配されて。



私って、千冬がいないと何にも出来ないのかも。




「久しぶり！」
「同窓会以来だから、一ヶ月ぶり？」




週末、未来とご飯を食べに。


左手には、この前までなかった指輪が。
旦那さんも、こんな美人が奥さんなんて、幸せだろうな。




「あ、そうそうこれ！」
「招待状？あっ、結婚式？」
「そうそう、ぜひ千冬くんと来てね」
「……え、あっ…うん！」




結婚式、かぁ。


友人の結婚式で、自分の結婚も意識するようになるって、よく言うよね。


これを機に、沙羅ちゃんとの結婚を考えたり…。
って、まだ付き合ったばっかりだから早いかな…。




「綺麗だろうな、未来のウエディングドレス姿」
「Aのも楽しみにしてるからね！」
「あはは〜いつになる事やら」
「すぐでしょうよ！」




彼氏もいないんだが…！


でもそうだなぁ…。
やっぱり若いうちに、花嫁姿を両親に見せてあげたいな。
元気な内に、孫だって抱かせてあげたい。




「そうだといいな！」
「大丈夫だよ！」
「ふふ、ねぇ旦那さんの写真ないの？」
「あるよー！見る？」
「みたーい！」




旦那さんと寄り添う写真は
二人とも、とっても幸せそうで。



私もいつか、誰かとこんな風になれるだろうか。



未来の惚気話を聞きながら、飲み明かす。



楽しい時間はあっという間で
もう終電の時間。




「結婚式楽しみにしてるね！」
「ありがとう！」




幸せのお裾分けで、
来週からの仕事が、頑張れそうな気がした。

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