愛し愛され。振り振られ。【短編集】

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家までの道をトボトボ歩く。


長い片思いだったな…。
なんで口悪いのにモテるんだよバカッ！


幼馴染じゃなくて、もっと違う形で出会っていれば、私を異性として見てくれたのかな…。


今となっては、何もかも手遅れだけど。




「おい！！」




ビクッと肩が上がる。なんで…。




「待てよ！！」
「……っ」




ナホヤに後ろから腕を掴まれ、これ以上前に進めない。




「おいって！」
「……何」
「こっち向けよ」
「ごめん…」
「は？いいからこっち向けって！」




私の顎を挟んで強制的に目が合った。
いつもフワフワのパーマは、雨に濡れてしんなりしちゃってる。




「……何泣いてんだよ」
「雨でしょ」
「店出る前から泣きそうな顔してたろ！」
「風邪引くから帰る」
「こっち来い」
「ちょっと、」




シャッターが閉まった本屋の前で雨宿り。


早く帰らなきゃ。
あんたの顔見てるだけで、泣きそうなんだよ。
何で追いかけて来たの…、可愛い子が隣にいたくせに。




「A」
「ごめんね」
「何が」
「飲み会行っちゃって…」
「そんなの、」
「可愛い子に勘違いされちゃうもんね」
「は！？」




私の腕を掴むナホヤの手に力が込められた。




「私がいたから今までの彼女とも続かなかったのかな…」
「違う」
「嫌だよね、彼女もさ…っ」
「違うってば！」
「だからね、私もうナホヤと会わない…から…」
「は！？」
「早く戻ってあげて？あの子のとこに、じゃあね」




ナホヤの腕を振り払って歩き出した瞬間、




＿＿＿＿ギュッ。




「……ナホ、ヤ…？」
「お前のが可愛い」
「ななな、え、なに…っ」




後ろから首元に腕が回されて、耳元でナホヤの声がする。
プチパニックなんだけど！




「さっきはごめん、ブスなんて思ってない」
「どうしたの急に！いつもの事じゃん！」
「だったらお前もいつも通り言い返して来いよ！」
「……っ」




そうだ、ショック過ぎて言い返せなかった。
気にしてくれてたの？ほらね、そういう優しさがズルイんだってば…。




「本気で嫌だったんだよな、ごめん…」
「……大丈夫だから…早く戻んな…っ」
「会わねぇとか無理だよ」
「何言って、」
「俺A以外の女に興味ねぇもん」




くるんと回されナホヤと向かい合う。
不器用な手つきで私の涙を拭いながら、
「泣くな」って、困ったように笑ってる。


ねぇ、今のどういう意味…？

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