愛し愛され。振り振られ。【短編集】

▼ ページ36

「ハァ…」
「どうしたのよ」




何にもやる気が起きない。
週末のご褒美もなくなって仕事も全然楽しくない。


同僚のミコが、呆れたように笑ってる。




「失恋した…」
「あー、例のエレベーターボーイ？」
「……異名ダサ」
「本当の事でしょ！」




ミコが「どうよ？」って、パソコンの画面を指すから覗き込む。




「婚活？」
「新しい恋でも探したら？」




このサイトで出会って結婚しましたー！とか、幸せそうに笑うカップルの写真。

ソウヤくんが映ったら
みんな怖くて、ページ閉じるだろうな。




「何笑ってんの？」
「んーん、何でもない」




ソウヤくんを想えば、笑顔になれる。
本人はあんな怖い顔してるのに。


婚活かぁ…。そうだよね。
新しい出会いを探すのも、悪くないかもしれない。


今日は金曜日。


一ヶ月前までの私なら、今頃ウハウハ。
家でラーメンでも作って、食べようかな。


ソウヤくんが作ってくれるラーメンをイメージして、買い出し。
ラスト一個の卵に手を伸ばせば、誰かと手が重なった。




「「す、すみません…！」」
「え！」
「Aちゃん！！」




まさかのソウヤくんとバッタリ！




「卵切らしちゃったの…？」
「うん…」
「はい！お仕事頑張ってね！」




卵をソウヤくんに手渡して、その場を後にしようと回れ右。
だけど、左腕を掴まれ前に進めない。




「ま、まって！」
「ど、したの…？」
「今日…金曜日だよ…？」
「知ってる…」




だから、お家でソウヤくんを想ってラーメンを食べるんだもん…。




「……怒ってる？」
「え！怒ってないよ！」
「じゃあ、何で最近来てくれないの…？」
「……それ、は…」
「最後来てくれた日も、帰り際様子おかしかったし…」




な、なにか言い訳…！
頭の中には、好きな人がいる発言が無限ループ。




「あ、明日いくね！」
「……明日休みなんだ」
「あっ、と…じゃあ来週、」
「明日俺休みだから、ご飯食べに行かない？」
「え！？」




好きな人がいるから、他の女の子とはデートしないんでしょ？

あれ。てことは、私は異性にすら見られてない…？がびーん
だけど惚れた弱み…、




「ダメ…、かな？」
「ううん！行きたい…！」




行かないなんて選択肢、私にはない。


自分で傷を抉って、何やってんだか…。

▼→←▼

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す