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沈黙。
気まずい。
「あ、の…嫌でしたら、」
「いいけど」
「いいんですか!」
「あぁ」
近くの居酒屋に入って、カウンターに横並び。
緊張してきた…。何話そう…。
でもなんていうか…、この人なら無言も心地良い…。
「何飲む?」
「日本酒で…」
「ハハッ、意外」
「そう…ですか…?」
「小動物みてぇな奴が、日本酒って」
「ちょ!誰が小動物ですか!」
お酒が進むにつれて、おつまみを取り合ったり、冗談を言い合ったり、仕事の愚痴を零したり。
社内に今まで、こんなフランクにいられる人いなかった。
「場地しゃん」
「呂律が危ねぇな」
「目悪いんですか?」
「いや?」
「どうして眼鏡…?」
「……頭良く見えねぇ?」
思わず吹き出す私に、顔をほんのり赤くさせて
「笑ってんじゃねぇよ!」って、言った。
___眼鏡を外しながら。
「え…」
「なんだよ」
かったるそうに髪を解いて、首をフルフル。
少しクセのある、綺麗な黒髪。
男の人に見惚れたのは、初めてだった。
「カッコイイ…」
「そうか?」
「武装を解いていいんですか…?」
「武装かぁ…、お前ならいい」
フッて笑う顔に、鼓動が早くなった。
それからよく、二人でランチをする仲に。
プライベートで会った事はない。
それは、場地が私を異性として意識していない答えだ。
だからせめて…、社内で一番仲の良い人ではありたかった。
「眼鏡してたら、バスケやりづらくない…?」
「確かにな」
「持ってようか?」
「おう、頼むわ」
何の気なしに放った言葉だった。
だけど、これが間違いだと知るのは、試合が始まった瞬間。
“え、誰あのイケメン”
“うちにあんな人いた?”
“あの髪、場地さん!?”
そこから、場地への黄色い声援が止まらない。
私は、後悔に苛まれ立ち尽くした。
そうだよ…。眼鏡を取ったら彼がモテる事くらい、わかりきってた事じゃん。
女性社員の掌返し。
休憩に入れば、タオルや飲み物を持って囲まれ、みんなが場地に好意の目を向けていた。
「ねぇ?」
「あ、はい?」
加藤さん…?
社内一綺麗だ、うちのマドンナだ!って、男性社員が囃し立てていた。
「それ場地さんの眼鏡?」
「え…、そうですけど…」
「私が彼に返しておくよ!」
「でも……ちょっ!」
私から眼鏡をふんだくり、颯爽と去って行く。
場地に視線を向ければ、解いた髪をタオルでワシャワシャして、女の子達と笑い合っていた。
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だいこん - えっすきすぎる、、、!!!場地さんのとこずっとキュンキュンしっぱなしで、、、!!!ほんと天才すぎますっ!!こんな神作を、、、、!!!✨✨✨ありがとうございますっ!! (3月14日 21時) (レス) @page28 id: fdeded875e (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 三ツ谷くん夢本当良きです! (2023年4月20日 10時) (レス) @page14 id: f3df519faf (このIDを非表示/違反報告)
ゆいとこ - ドラケンくんで泣きました。今まで読んできた小説の中で一番キュンとしました。ほんとうにこんなにおもしろい小説を無料で読めるなんて贅沢です。ありがとうございます!!! (2022年10月24日 11時) (レス) id: e4df59fc58 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - もうなんなんですか!!天才ですね!!最高でした!!!ありがとうございます。 (2022年8月27日 21時) (レス) @page47 id: bd86862afa (このIDを非表示/違反報告)
睦月 - 初めまして!小説読ませて頂きましたが素敵な作品ばかりでした!キュンキュンしちゃいました(笑)個人的にはイヌピーとココが好きなので短編を書いてくださると嬉しいなぁとか思ってます。個人的な意見を言ってすいません(><) (2022年7月23日 2時) (レス) id: 3944e3eebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:matsuri | 作成日時:2022年2月15日 17時