▼ ページ22
彼の手には、私のグロス。
「……あり、がとう…ございます…っ」
怖くて顔が見れない。
こんな、惨めな姿見られたくなかったな…。
彼の手に乗った物を掴んだ瞬間、物凄い勢いで腕が引かれた。
「俺、大丈夫？って聞いたんだけど」
「……若くん…」
しゃがみ込んだまま、私を強く抱きしめる逞しい腕。
大好きな匂いに包まれて、先程とは違う涙が溢れる。
「A？」
「……だいじょぶ」
「嘘こけ！」
私を抱き上げ立ち上がる。
ややややっ…！流石に恥ずかしい！
ただでさえ、注目されてるのに！
若くんは、周りの目なんか気にしてなくて
涙で顔に引っ付いた髪を、どかしてくれてる。
「あ、あの…！」
「チッ、またテメェか」
「覚えててくれて嬉し、」
「消えろ」
「……え」
ユウナは茫然としている。
男にこんな言われ方するのが、初めてなんだろうな。
いい気味、なんて思う私は最低だ。
若くんが、私を抱いたまま歩き出した。
「自分で歩けるから…！」
「なぁ」
「あの…おろし、」
「別れねぇよ？」
今日も重そうな瞼は、真っ直ぐに前を見据えている。
何も言えない…。
昨日今日って、自分が哀れすぎてもう嫌なの。
「高校生の時さ」
「ん？」
「喧嘩で怪我して、公園のベンチに座り込んでたんだ」
……何の話だ。
「その時、中学の制服着た女が近寄って来た」
「……うん？」
「大丈夫ですか？って、特攻服着てる俺に」
「……えっ」
「小っせぇ手で救急箱抱えてさ」
「ねぇ、待って」
「ガキは早く帰れって言った俺に、その子何て言ったと思う？」
「……怪我人を放っては帰れません」
若くんがようやく私を見た。
「そんで、手当してくれたんだよな」
「あの時の…若くんだったの？」
「あぁ」
若くんがそっと私を降ろした。
目の前には、あの日の公園。
「手当しながら、ニコニコ話すAに見惚れた」
「懐かしいね」
「可愛いって思ったんだ」
「う、うそだ！あんな地味女を！？」
パチパチゆっくりまばたきをして
不思議そうに首を傾げる若くん。
「地味だと可愛くねぇの？」
「いや、そういうわけじゃ…」
「派手だと可愛いの？」
「えっと…」
「そうじゃねぇだろ」
私の頭をポンと叩いて、フッて笑った。
「俺が可愛いと思うのは、そん時からお前だけ」
「若くん変わってる…」
「そうか？」
なんだか今日の若くんは、楽しそうだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 997人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
だいこん - えっすきすぎる、、、！！！場地さんのとこずっとキュンキュンしっぱなしで、、、！！！ほんと天才すぎますっ！！こんな神作を、、、、！！！✨✨✨ありがとうございますっ！！ (3月14日 21時) (
レス) @page28 id: fdeded875e (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 三ツ谷くん夢本当良きです! (2023年4月20日 10時) (レス) @page14 id: f3df519faf (このIDを非表示/違反報告)
ゆいとこ - ドラケンくんで泣きました。今まで読んできた小説の中で一番キュンとしました。ほんとうにこんなにおもしろい小説を無料で読めるなんて贅沢です。ありがとうございます！！！ (2022年10月24日 11時) (レス) id: e4df59fc58 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - もうなんなんですか!!天才ですね!!最高でした!!!ありがとうございます。 (2022年8月27日 21時) (レス) @page47 id: bd86862afa (このIDを非表示/違反報告)
睦月 - 初めまして！小説読ませて頂きましたが素敵な作品ばかりでした！キュンキュンしちゃいました（笑）個人的にはイヌピーとココが好きなので短編を書いてくださると嬉しいなぁとか思ってます。個人的な意見を言ってすいません(><) (2022年7月23日 2時) (レス) id: 3944e3eebe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：matsuri
| 作成日時：2022年2月15日 17時
