愛し愛され。振り振られ。【灰谷竜胆】

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まさか、本気で言ってたなんて。




「せーの？」
「オカエリナサイマセ、ゴシュジンサマ」
「何で、棒読みなんだよ」




竜胆が、真夜中過ぎても楽しいお店〜♪で、
メイド服を購入してきた。


ハァ…。
お酒の勢いで、一日メイドを引き受けた、あの日の自分を呪う…。




「やっぱりヤダは…？」
「だーめ！ほれ、俺の事呼んでみ？」
「……ご主人様？」
「可愛いねぇ？俺のメイドさん♡」




こうして始まった、主人とメイドごっこ。


普段、自分の事は自分でやるのに、
今日は何かと私を呼ぶ。



ご飯作って
食べさせて
歯磨いて
着替えさせて
髪の毛やって
マッサージして



今日はとことん、甘えん坊な竜胆。
正直、可愛くて、なんでもしてあげたくなるのです！




「とんとんして」って、私の手を背中に回す。
リズムを刻めば、私の膝で眠る可愛い竜胆。



静かに膝から降ろし、
とことんメイドをしようと、部屋の掃除を始めた。



気付けば、二時間くらい経っていて、
最後に換気扇を掃除していると、




「A！」
「わっ、びっくりした！」




なんだか怖い顔で、
ずんずん私へと歩み寄ってくる。



ななな、なに事！！




「なにやってんの」
「え、掃除？」
「見ればわかる」




じゃあ、聞くなよ！




「トイレ、排水溝、カビ掃除もしたろ？」
「し、したよ…？」
「終いには、換気扇？」
「あ、うん…、ダメだった？」




竜胆は私の腕を掴んで、
シンクでゴシゴシ私の手を洗い始めた。




「ダメに決まってんだろ」
「メイドさんしてただけなのに…」
「メイドは主人の世話だけしてれやいいんだよ！」
「ごめんね…」




がーん。

喜んでもらえると思ったのに、
逆に怒られちゃった…。めそめそ




「お前もう、メイドクビ！」
「ま、まじか！」




しゅん。
喜んでくれると思ったんだけどなぁ…。




「ったく、汚ねェとこは俺がやるから、お前はやんなくていんだよ！」
「……え？」
「綺麗な手が汚れちまうだろ！あークッソ！この黒いの落ちねェ！」




私の指に付いた黒ずみを
必死に落としてくれようとする竜胆。

そんな事より、竜胆の愛情に涙ちょちょぎれなんだけど！




「竜胆…」
「あ？」
「一緒にお風呂入ろ？」
「珍しいじゃん」
「次は竜胆に執事してもらうー！」




ぎゅうっと抱き着けば、あはって笑った。




「仰せのままに」



彼氏でも、主人でも、執事でも

結局いつも、竜胆は底抜けに優しい。

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