愛し愛され。振り振られ。【灰谷竜胆】

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「なぁ、マジで行くの」




竜胆とわかり合えた日から、幸せな毎日を送ってる。



兄貴カップルと食事をしたり、
竜胆とお出かけしたり、
仲良く手を繋いで眠ったり、
一緒にお風呂に入ったり…。



私的に、最後はいらないんだが。




「髪の毛変じゃない？」
「変」
「うそ！化粧は？」
「変」
「どうしよ！やり直してる時間ないのに！」
「だから今日はやめな」




玄関の全身鏡をチェックして、
竜胆に振り返れば、口をへの字に曲げている。




「だ、だめだよ！今日は行く！」
「なんで？」




竜胆は私一人くらい、食わしてやるから、働くな！
って言うけど、そんなわけにいかない。


どうにか頼み込んで、
週二回までなら、バイトしていいって許可がおりた。


今日がその面接日なんだけど…。




「お世話になりっぱなしだし…」
「別にいいじゃん」




竜胆の家に住ませてもらって、
お金の面倒も全部見てもらうなんて…。




「夫婦ならまだしも、彼女、」
「んじゃ、今から籍入れに行くか」
「なな、なに言ってんの！」
「灰谷Aになろ？って言ってんだよ」




正式に彼女になってからというもの、
宣言通り、竜胆はドッロドロに甘い！




「朝から、ドキドキさせないでっ」
「いつでも、俺にドキドキしとけ」




あつーい抱擁を受けて、
あぁ行きたくないかも、って思ってきた。



ハッ！ダメ！



こうやって、いつも竜胆に流されてる！
面接ドタキャン、計五回はしてるもん！




「い、いってきます！」
「あ、クソ！今日は頑固ちゃんだな！」




玄関に来て、
かれこれ、五分は経ってると思う…。


竜胆が、ハァっと溜息をついた。




「送ってやる」
「ありがと！」




初めて、竜胆が折れた！
眼鏡をかけて、上着を羽織り私の手を引く。



メットを被せてバックルを止めてくれて、
抱っこで後ろに乗せてくれる。




「お姫様みたい…」
「あ？だって俺のお姫様だろ？」




ニカッと笑う顔が、
どうしようもなくカッコ良くて、また惚れた。


　



　



　


　


「絶対竜胆のせいで落ちた！」
「人のせいにすんじゃねェ」
「なんで後ろの席に座ったの！」
「可愛い姫が、ちゃんと受け答え出来っかなって」
「嘘つけ！睨んでただけじゃん！」




可愛らしいカフェで、
店長さんも優しそうだったのに！




「そんなにカフェで働きてェなら、俺のメイドにでもなっとけ」




すべては、
竜胆の策略通りである。

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