愛し愛され。振り振られ。【灰谷竜胆】

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「遅くまで、申し訳ありません」




レンくんが、頭を下げて、
慌てて二人の間に入った。




「違うの！私が付き合わせちゃって、」
「お前は黙ってろ」




竜胆の鋭い目。
どうしてそんなに、怒ってるの…？




「そんなに怒る事かな…」
「あﾞ？」
「電話で謝ったじゃん…」
「男と飲むとか聞いてねェけど？」




え、待ってよ。

自分は美愛ちゃんと会うのに、
私はダメってこと？




「……人の事言えないじゃん」
「なに？聞こえねェよ」
「自分だって、女と会ってたくせになんなの！」
「女って、美愛だろうが」
「女じゃん」
「美愛の事知ってんだろ、お前は友達とか言って濁しやがって」
「濁してないし！本当に友達だもん！」
「男って言わなかったじゃねェかよ！」
「あ、あの！」




今度はレンくんが私たちの間に入る。
迷惑かけっぱなしだ…。




「落ち着いて下さい、ね？」
「お前は引っ込んでろ」
「レンくんに、そんな言い方しないでよ！」




私の言葉に、
竜胆がとうとう青筋立てて怒ってる。


ヤバイ。こわい。


けど、ずっと気になってた事がある。
竜胆が、最初にレンくんに放った言葉。




「私って、竜胆の彼女なの…？」




すきだ、とは言われた。

でも別に、それ以上の言葉も、身体の関係だってない。




「それ、本気で言ってんの？」
「え、だって…、」
「……もういいわ」




竜胆が怒り、悲しみ、両方を含んだ顔で、一歩後退る。




「待って、竜胆！」
「ごめん、今は一人になりたい」
「……わ、かった…」




竜胆の背中が見えなくなっても、
その場から、動く事が出来なかった。


レンくんが、隣にいる事も忘れるくらいに。




「A」
「あ、ごめん！帰ろ！」
「竜胆さん、Aの事大好きなんだよ」
「えっ？」
「じゃなかったら、あんなムキにならないよ」
「そう、かな…？」
「すげぇ心配してたと思うよ？」




不在着信の数、
迎えに来てくれた事、
レンくんの言葉…。



タクシーで家に帰り、携帯を見つめる。



連絡はつかないし、あんな時間になっちゃったから、きっと心配してくれたんだよね。謝らなくちゃ…。



一人になりたい、そう言ってたけど、電話して大丈夫かな…？
私の不安をよそに、すぐにコール音は止んだ。




「……はい」
「りん、ど…あの、」


　







“竜胆〜お風呂湧いてるよ〜”




前にもあったな。こんな事。

電話越しに聞こえた美愛ちゃんの声に、
乾いた笑いが漏れた。

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