おまけ ページ48
暗い路地裏。
数人の男達が殴り合い、怒号が飛び交う。
この場に似つかわしくない、お下げ髪の中性的な顔立ちをした男が一人。
prrrr
そこに鳴り響く一本の電話。
警棒を振りかざしながら、徐に携帯を取り出し自身の耳へと当てた。
「怖い夢でも見たか？」
「蘭ちゃん…」
「どうした」
「まだ帰って来ないの…？」
倒れ込む男に、警棒を振り下ろしながら話す内容ではない。
殴られている男が、呻き声を上げながら、信じられないものを見るように怯えている。
「もう少しかかる」
「早く帰って来て…」
「だから、どうしたんだよ」
倒れている男が何に怯えているか？
それは、無心で人を殴れる男が、顔を緩めて甘い声を出しているからに違いない。
「リビングにゴッキーが出たんだよぉ…」
「虫なんか怖くないだろ？お前のが図体デケェんだから」
後ろから襲って来た男を、いとも簡単に殴り飛ばす。
電話の相手は、男が人を殴りながら電話をしているなんて、思ってもいないだろう。
「どっか時間潰しに行ってもい…？」
「危ねぇからダメだ」
どの口が言っているのか…。
その子の周りで1番危ないのは、お前である。
「じゃあ、蘭ちゃん早く帰ってきてよぉ…」
「まだ帰れねぇ」
「蘭ちゃんいないと怖くてやだ…！」
「……もう少し待て、な？」
男が一瞬揺らいだ。
なぜなら、殴っていた手を一度止めたのだ。
「駅前なら明るいから、そこの居酒屋、」
「お外はダメだって」
「……らんちゃん…」
男がとうとう警棒をしまった。
もう一人、顔の似た男が、関節技を決めながら、不思議そうに見つめている。
甘さが滲む声は、とうとう彼女に言い放った。
「すぐ帰る」
「……なんぷん？」
「十分我慢しろ」
「ん…」
「蘭ちゃんのお部屋にいろ、わかったか」
「わかった、蘭ちゃん？」
「なに」
「だいすき」
もう一度言う。
甘さを滲ませた声、柔らかい表情、中性的な顔立ち。
この男はこの場に、全く似つかわしくない。
「俺も愛してんぜ」
仲間に背を向け歩き出した。
みんなが唖然と見つめる中、一人が声を張り上げる。
「兄貴！どこ行くんだよ！」
「帰る」
「は？こいつらどうすんだ」
「こいつらの前に殺すやつが出来た」
さっきの虫の事である。
男は、後ろを一切振り向かない。
「おい待てって！」
「時間がねぇ、Aが泣いてんだよ」
この男は弟も仲間も引くほど、
自分の女に甘いのであった。
…fin
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hn(プロフ) - 最高に面白かったです！！！ (2022年10月6日 20時) (
レス) @page49 id: e0eb294673 (このIDを非表示/違反報告)
西姫(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです(*^^*)マナブ君も良いキャラで大好きです♡ (2022年4月4日 1時) (レス) @page49 id: 88164419ff (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 初めてコメントします！もうマジ泣きしてしまいました‼︎おまけめちゃくちゃ好きです！！！！ (2021年12月30日 8時) (レス) @page50 id: 8fb73b1872 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - 完結お疲れ様でした。ずっと見てたのに初めてコメントします。毎回泣いたりニヤニヤしたりと感情が振り切ってました！素敵な作品をありがとうございました。竜胆くんの話も楽しみに待ってます。 (2021年10月12日 18時) (レス) id: cb2ce3c237 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - おまけめちゃくちゃよかったですー！！続編や番外編も見てみたいと思ってしまいました(/ω＼)素敵な作品をありがとうございました！！ (2021年10月12日 17時) (レス) @page49 id: 9c8bda99d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：matsuri
| 作成日時：2021年9月16日 18時
