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疑心暗鬼の現実主義者が請け負う事になった摩訶不思議な依頼は、「厭世の魔女」の殺害である。
「厭世の魔女」。魔女の中でも極悪非道で、全ての掟を破り背いたその姿は見掛ける度に変わるらしいが、金色の美しい髪に翡翠色の瞳はまるで精霊の様だと言わしめる程の美しいのだと言う。一度は裁かれ、“楽園の塔”と呼ばれる罪を犯した魔女が行き着く場所に投獄されたが、彼女の使い魔達による反乱によって脱獄してしまいい、現在は現存する魔女達で彼女の行方を追っているらしい。何の罪に問われたのかは分からないが、魔女の世界では相当な重罪を犯していると言う。
ならば、殺してはいけないのでは? と当然の疑問が出てくるが、楽園の塔に送られた魔女は死ぬ事が確定された魔女である為、生死は問わないのだとミネルヴァは言った。本来は魔女の不祥事は魔女が解決するのが当たり前なのだが、魔女の人口が減りつつある現代、そんな贅沢は言ってられないらしい。
そこで偶然見かけて、恐らく裏の人間であろうロベルティーネに白羽の矢が立った訳である。
「だが、私に殺せるか? 相手は魔女だぞ?」
「無音の死神」としては実績があるにはあるロベルティーネにも、魔女が殺せるかどうかは分からない。
魔女は超自然を操る人間、もしかしたら治癒魔法なる物も使える可能性もある。RPGじゃないんだからと突っ込んでも良いのだが、現にメルヴィンが治癒魔法らしい物を使っていたので、確実に治癒魔法が無い訳ではない。
疑問に対し、ミネルヴァは席から立ち上がり、書類が山積みになっている机を適当に漁る。パラパラと紙が数枚程床に落ちるが、彼女は気にせず、机の引き出しから小さな小箱を取り出してロベルティーネの側まで駆け寄った。
そして、その小箱を静かに開ける。中には細長い結晶石がチェーンに繋がれた、お洒落なペンダントが収まっていた。
「これで文句はないかしら?」
「アクセサリーか?」
「これは私が作った特殊な石よ。これを厭世の魔女の胸元に埋め込みなさい」
「埋め込む?」
不審に思いながら、ロベルティーネはペンダント手に取る。掌に収まってしまう小さな結晶石は透明で、少し青みを帯びている。形状は真っ直ぐ尖っていて、掌を突付くと少しだけ痛い。まるで切れないナイフの様だ。何の変哲も無い美しいアクセサリーだが、「只の石じゃ無いわ」とミネルヴァは説明を挟む。
「楽園の塔に投獄された魔女にしか効かない魔法の石。作るのにとても苦労したものよ」
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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月18日 21時