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「心底下らないな。そんな事で一々考え込んでいては、いつまで経っても魔女に会えないぞ」
「それは困る!」
この分では話の内容が脱線してしまうと感じた彼女が軌道修正した事により、メルヴィンはやっと前を向いて歩き出した。そんな事で議論してても面白くも何ともないし、日も暮れてしまう。さっさと彼から離れたいロベルティーネは、早足でジャルドーレ通りにある広場を目指す。それに気付いたメルヴィンは「待ってよぉ」と情け無い声を上げながら、駆け足で彼女を追った。
***
ジャルドーレ通りにはいくつか広場が点在するが、この中央広場は常に人で賑わっている。何だかよく分からないアーティスティックな彫刻で象られた噴水周辺は、此処に住む者にとっての憩いの場となっており、時々大道芸や語り部、屋台等がやって来る事もあり、人が途絶える事は殆ど無いに等しかった。
そんな広場の端、流れる水路を跨ぐ橋の手摺に肩肘をつきながら、ロベルティーネは通りを軽く見渡しながら、情報を持っていそうな人間を見定める。この広場には時々、情報屋等の裏の世界で生きる者が稀に紛れている事もあるので、一般市民とを区別しながら、それらしい人物を探す。
一方のメルヴィンは彼女の横で、目を輝かせながら広場を観察している。先程とは違い、大人しくしてくれるのは大助かりなのだが、やはり連れだとは死んでも言いたくないなと、ロベルティーネは広場から目線を切らさず、不愉快そうにそう思った。
「あれ、ロベルティーネさん?」
不意に後ろから声を掛けられ、彼女は身体を強張らせる。気配で一般市民だと判断し振り返ると、そこには高価そうなダブルスーツで身を包み、沢山の食料を入れた紙袋を抱える男が、柔らかそうな笑みを浮かべながら立っていた。プラチナブランドの髪を靡かせるその人は、ロベルティーネにはよく馴染みのある顔であった為、彼女は再び驚く。
「だ、ダンテさん、こんにちは……」
「はい、こんにちは」
男は軽く会釈をすると、細い目を更に細める。
ダンテ・ルリエール。ジャルドーレ通りの南部、大通りの突き当たりにあるホテル「Fragum」──ヴィクトリア調のアンティークな外見の建物で、現代風に言うなら古民家ホテルの様なイメージが強い小さなホテル。部屋数が少なさも相まって、知る人ぞ知るホテルとなっている。因みに従業員はたったの三名と少ないが、サービスは他のホテル以上に充実している──のオーナーである。
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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月18日 21時