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そのせいか、さっきからキョロキョロとジャルドーレ通りの街並みを見渡しており、静かに行動していたい彼女には煩わしい事この上なく、地味に彼と距離を開けながら歩いていた。
「綺麗な街だね。絵に描きたいぐらい」
「あっそ。そう思うぐらいなら、もう少し大人しくしてくれませんかね」
青年の怪しい挙動に、街を行き交う人々から好奇の目に晒されているのだ。それはそうだ、さっきからこの男はロベルティーネの横をぐるぐると回ったり、後ろ向きに歩いたりと忙しない。随分と器用に歩くので、大道芸の様にも見えた。彼女にとって、それが心底鬱陶しくて堪らない様だ。
「そう言えば、君の名前を聞いてなかったや」
「今更だな。まぁ、私も言う気がなかったからな」
「何で!?」と大袈裟過ぎるリアクションをされて、更に注目が集まるが、ロベルティーネ本人はさっさと居なくなる人間(?)に名前を教える必要が無いと思っていたが、どうやらメルヴィンは違ったらしい。思い出したら聞きたくなったのか、彼は教えて教えてと煩くなり出したので、仕方なく彼女は嫌々ながら小声で答えた。
「……ロベルティーネ・ディートリッヒ」
「厳つい名前だね。もしかして、ドイツ人?」
「イギリス人」
ドイツ人が皆、厳つい名前だと思うな。そうは言うが、ロベルティーネは生粋のイギリス人である。何故、ドイツ人名なのかについては彼女の出生まで話が遡るので追々語るとして、いつも言われる事なので彼女は手慣れた様子で訂正する。だが、人種についてはメルヴィンにも言える事だった。吸血鬼であると言っているが、本来は呪いを掛けられた人間だった訳で、となると、彼の容姿とミドルネームについて気になる事もあったが、彼女は特に追求せずにいた。そこには決まって、“いつか居なくなる存在”だと思っているからだ。
一方、メルヴィンは何故か何とも形容し難い微妙な顔をしていた。全く、百面相が得意な事で。
「……何、その顔」
「んー、なんかロベルティーネって名前より、君にはもっと綺麗な名前の方が似合いそうなのになーって」
理由を聞いてくれと言わんばかりの顔だった為、仕方なく聞けば、やはり返ってきたのは下らない話だった。
ロベルティーネは特に自分の名前については気にしておらず、名前なんて個人を識別する為に付けられる番号みたいな物だと認識している彼女にとって、その名前が似合う似合わないの話はよく分からなかった。と言うか、顔付きで名前は決まらない。
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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月18日 21時