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相変わらずの呑気さに頭痛を覚えるロベルティーネだが、取り敢えずは報復をしに来た訳では無いと判断する。しかし、警戒を解くつもりは無く、ナイフは下ろしたものの、それを懐に仕舞う事はなかった。それを見た青年は、ナイフを握られていないもう片方の手を取って、故意に忘れていったナイフを握らせる。それも笑顔で。ねぇ、貴方。それ、殺人鬼に殺戮兵器を渡したのも同義ですよ? とは誰も突っ込まない。しかし、彼女にはそれ以前に気になった事があった。
 触れた彼の手が異様に冷たかったのだ。それはそれは、氷の様に。末端冷え性の人は時々見るが、彼のそれは全くの別物だった。まるで血が通ってない死体の様な冷たさ。その冷たさが伝染したのか、ナイフも凍っているかの様に冷たい。彼は変わらず間抜けな顔をしていたが、これは異常だ。昼間、それも焚き火が出来る程空は晴れ渡っていたと言うのに、体温が上がらないのは可笑しい。

「君の手はあったかいね」

 死人の様に真っ白な顔をした彼は、名残惜しそうに手を離した。触れられた手が温かさを求めてじわじわと血流を速める。熱伝導でナイフも少しずつ温くなる。

「紹介が遅れたね。俺はメルヴィン・A(アキナリ)・ブレイン。宜しくね」

 どっからとも無く、手品の様に薔薇を一本取り出すと、それを彼女に再び差し出した。彼の手に触れるのが嫌だったので、彼女はナイフを一本だけ懐に仕舞うと、今度はその薔薇を受け取る。紅い紅い、血の様に紅い薔薇の花。茎には鋭い棘はあったが、何故か持ち手の部分だけには棘が丁寧に抜かれていた。これが未来の東洋の国にある少女漫画のヒロインであったなら、ときめきの一つや二つ、恋愛フラグが立っていそうな物だが、生憎ロベルティーネは恋愛等と浮かれた感情はバッサリと切り捨てている為、只々一本の薔薇を眺めているだけである。
 勿論、挨拶程度にしか薔薇を差し出していない青年ことメルヴィンは長椅子に座ると、「君も座りなよ」と隣の席をポンポンと叩く。此処はお前の家でも何でもないんだがと文句が言いたくなったロベルティーネは、その誘いを動かない事で断った。彼はそれを見て、心成しか残念そうな表情を見せながら勝手に話し始める。

「君は殺し屋……『無音の死神』って呼ばれてるんだよね? 頼みたい事があるんだけど」

 知ってて近づいたのか。本当に彼の無神経さは計り知れない。彼女の考えを他所に、彼は頼み事の続きを話した。

「俺を殺してくれない?」

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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月18日 21時

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