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男は壁に打つからなかったとは言え、コメカミに強烈な蹴りを食らっていた為、よろけて膝をつく。そこへ、ロベルティーネは無慈悲にもタックルする様に腹に肘を打ち込んだ。「ガハッ」と、男は吐瀉物を撒き散らしながら壁に激突する。そして、前のめりに倒れる寸前で彼女は男の懐からスルリと抜け出す。そして、パシャリと男は自分の吐瀉物の上へ倒れた。
その原因を作ったロベルティーネは服に汚物が付いていない事を確認すると、倒れてる男を見る。宛ら、ゴミを見る様な目──実際、汚物の上で倒れているので間違ってはいない──か。メルヴィンも「うわぁ……」と若干引き気味で男を見た。
「死んでるの……?」
「今は生かしておいてある」
「さっきお前と話してた内容についても、聞きたい事があるから」と言って、彼女は大袈裟に溜め息を吐くと、頰の辺りからピリッと痛みが走った。先程切られた傷だ。そっと触れてみると、既に血は止まっていて、軽く膜が張っている状態になっていた。息つく間も無い戦闘の後だった為、絶え間無く溢れ出ていたアドレナリンが切れたらしく、ジワジワと全身から痛みが出てくる。
「それ、痕になっちゃうかな?」
「舐めときゃ治るし、痕になっても……」
「良くないよ! ……そうだ、これなら大丈夫かな」
メルヴィンは何か閃いたかと思えば、頻りに目を閉じる様に促す。敵はまだ起きてこないだろうと想定し、仕方なく目を閉じたロベルティーネの傷が出来た頰を何かが撫でた。擽ったい感覚に少しだけ身を捩らせると、「目、開けていいよ」と再度促され、瞼を上げた。そこには笑顔のメルヴィンが移し出されるだけで、これと言った変化がない。しかし、触られた感覚がした頰を撫でた事により、ある変化に気付いた。ハッキリ言って有り得ないと言わんばかりに、彼女はメルヴィンを見た。
傷が、跡形も無く消えていたのだ。痛みも、違和感も無い。
「何をした」
「強いて言うなら……魔法、かな?」
「……」
幼児にでも考えられそうな言い訳の様にも感じたが、彼は一応吸血鬼と言う摩訶不思議な立場の人間(?)の為、一概には有り得ない訳ではない。それに続いて、二人目の男を吹き飛ばした放水射撃も恐らく彼の仕業だろうと薄々察していた。近くに消防器具があった可能性も否定出来ないが、もし無かった場合は確実に彼が言う魔法の力でと言う奴なのだろう。
いつから私はオカルトに目覚めたのだろうかと内心不安になった所で、近くから呻き声が聞こえた。
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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月18日 21時