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魔女と言えば黒い服に三角帽子を被った老婆を連想する物だが、彼の話を聞く限りでは随分と派手な魔女の姿──彼女は女性らしい格好にとても疎く、それこそ御伽噺のお姫様みたいなドレスしか想像出来なかったが──を浮かべる事が出来る。そんな魔女、何処かに居そうで何処にも居なさそうなので、何となく会ってみたくもあった。
 会ってはみたいが、手掛かりがない。そもそもメルヴィンが此処に来た理由は、ロベルティーネこと無音の死神に殺害依頼をしに訪れただけなのだ。となると、やはり地道に情報を集めねば、何処かに居そうで何処にも居ない魔女に会うのは難しいだろう。
 しかし、この間抜けな青年は唐突な所で物事を覆す事を言いだすのだ。

「その魔女の情報は、このジャルドーレ通りにもあるんだよね。と言っても、あくまで“魔女っぽい人”ってだけだけど」
「でも、その魔女がお前に呪いを掛けた張本人とは限らんだろ」
「そうなんだよ。でも、違う人でも手掛かりにはなるよね。行ってみないと分からない」
「まぁ、そうなんだけど……噂は噂なんだよなぁ」

 話半分。信憑性に欠いる。もし、その話もデマなら、結局自体は振り出しに戻る羽目になる。新しい情報が手に入るまで、この青年と一緒に行動を共にするのは御免だ。誰が好き好んでこんなファンタジー野郎と一緒に居たいと思うのか──いや、居たいと思う人間も少なからず居るだろうが、ロベルティーネにとってはこの男は規格外なのである。規格外にして予想外。行き当たりばったりの様で、ちゃんと考えている彼の行動が全く理解出来なかった。
 例えば、彼の発言についても理解出来ない物がある。吸血鬼と言えば、不老不死の象徴。錬金術師で無くとも、不老不死は人類の夢そのものと言っても過言ではない。一生老いる事もなければ、一生死ぬ事もない。正しく人類が抗えぬそれを、メルヴィンは持っていると言って良い。しかし、彼はそれを良しとせず、魔女の呪いと位置付け、元の身体に戻りたいと、あばよくは死にたいと彼はロベルティーネに清廉潔白、何の汚れもない本気一筋の契約を持ち掛けてきた。それが、彼女には何一つ納得は出来なかった。

「……なぁ、お前が仮に吸血鬼だったとしてだ。どうして、不老不死の身体を手放してまで死にたいんだよ。理解に苦しむ」
「だから、吸血鬼だってば。……実際には不老不死では無いんだけど、それでも死にたい。この世に居たくないんだよ、俺は」
「どうして?」

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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月18日 21時

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