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◆Prologue 01 ページ2

大人でさえも寝静まる深い夜の世界。
 昼間の姿から色を変えた街並みは、柔らかな光を放つ少しだけ欠けた月の光が降り注ぎ、とろりと濡らす様に建物と道路を照らす街灯は虚しく佇む。裏路地に入ってしまえば何も言えない程の暗闇で、途方も無く人々の不安を煽り立てる。
 一体の怪物の様な姿を見せる街に、一つの影がゆらりと揺れる。時節街灯りに照らされるその姿は、月の光の様な美しい髪は赤茶色に染まり、黒い服は誰が見ても分かる程に赤黒く変色し、固い麻布の様に乾いていた。片手には不気味な音を立てる麻袋、もう片手には血濡れのナイフが一本握られている。トボトボと寂しく歩くその姿はまるで迷子の様だったが、それにはとても似つかわしくない悍ましい姿をしていた。彼女にとって、それは普通。誰がなんと言おうと普通の事なのだ。何故なら、彼女は殺し屋を営む普通から逸脱した存在──彼女にとっては当たり前──なのだから。
 ──死神。
 顔も分からない──否、既にこの世に居ない男が零した最期の叫び。皮肉にも、その叫びは殺し屋である彼女の活動に大きな影響を及ぼした。
 「無音の死神」。音も無く忍び寄り、影も形も、在るもの全てを消し去る彼女にピッタリな通り名であった。
 金さえあれば、例え嫌いな相手や憎い相手、どこにでもいる平民から著名人、政治家、世界最年長を記録する老人から生まれたばかりの赤子まで全てを消し去ってくれる。良い事も嫌な事も、全て消し去る彼女はいつしか「無音の死神」と呼ばれる様になった。
 彼女はその呼び名に拘りは無いが、その名に恥じぬ働きを今までしてきた。何もかも消し去るだなんて、簡単な事じゃない。誰が付けたか知らないが、なんて面倒な通り名を付けてくれたんだと文句もあるが、それでも彼女はその名を捨てる事だけはしなかったのだ。

 だが、その絶対不可能な通り名を欲しいままにしていた彼女に、今日、それもつい先刻、屈辱的な事件が起きてしまう。
 ある男が態々、彼女の殺し屋の仕事帰りを狙って接触してきた。高価なスーツに身を包む肥満気味の男は「気に入らない相手が居る。大金を積むから、殺してくれないか」と、写真を差し出して依頼したのだ。勿論彼女は「Yes」と答え、その依頼を承諾した。
 結果から言わせれば、成功の二文字しかなかった。当然、彼女が仕事を失敗する事はないのだから、今回も難なく成功した。
 成功していた(・・・・)──“鬼”に会うまでは。

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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月18日 21時

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