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入隊&王子様 ページ7

私達は入隊した。

……けれど、同期には同期とみなされなかった。

これからがとても憂鬱だ。

新年開始早々どこからか私が未成年だとバレ、一瞬で広まってしまったのだ。

同期にはバカにされ、同じ部屋の人も友達の部屋へ行ったりしてうまくいっていない。

こんなこと誰にも相談できるわけはなく、周りに白い目で見られるのを耐えていくしかなかった。

毬江ちゃんは最近本をよく読みに来るようになった。

幹久くんに本を紹介されているのをみると私の立ち位置なのに……と、妬いてしまう。

ストレスが溜まる毎日だった。

10月初め、私は図書大学の次席だった堂上くんと懲戒に出ていた。

「香崎鈴々香です。よろしくお願いします」

「ああ。噂話聞いてる」

「気にする人ですか?」

同期でも気軽に声をかけれないクセがついていて気を許せない。

「いや。別に気にしない。わざわざ敬語使うな。能力が認められたから同期なんだろ」

「ありがと」

2人であまり都会ではない茨城の市へ来ていた。

本屋の前を通った時、中で検閲が始まっていた。

乱雑に本が投げ込まれた。

「ッ!」

言葉は何も出なかった。

「何を隠してる!」

良化隊の1人が私と同い年くらいの女子高生に向かって怒鳴る。

服の下には本を隠しているのだろう。

服の前がはだけられ、本が落ちる。

「ああ、それも入れとけ」

男が持って行こうとしたその本に女子高生はしがみついた。

「いやっ、返してッ!」

「何をする! それとも万引きの現行犯で警察行きたいか!?」

店長の男性が逆らうな。とでも言うように首を振る。

それと同時に堂上くんは駆け出していた。

私は、それを止めることはできなかった。

そして、付いていくこともできなかった。

「いいわよ行くわよ! あたし万引きしたから! 盗った本と一緒に警察行くから!」

「うるさい、離せッ!」

突き飛ばされた女子高生を堂上くんが支える。

堂上くんは有無を言わさず本を取り上げた。

「何をするキサマ!」

「こちらは関東図書隊だ! それらの書籍を図書館法第30条に基づく資料収集けんと三等図書正の執行権限を以て、図書館法施行令に定めるところの見計らい図書とすることを宣言する!」

手が小刻みに震えだした。

堂上くんは取り上げた本を彼女に渡して頭を撫でた。

私はその場に立ち尽くしたままだったことに気がついた。

私には人に暖かい言葉をかけることはできない。

私の頰に一筋の涙が流れた。

日野の悪夢→←卒業



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水無月歌恋(プロフ) - えりなさん» いえいえー!応援してます! (2022年5月28日 20時) (レス) id: 7d04816b57 (このIDを非表示/違反報告)
えりな - ありがとうございます! めちゃくちゃ嬉しいです!(*≧∀≦*) (2022年5月28日 20時) (レス) id: 34d2333fb9 (このIDを非表示/違反報告)
水無月歌恋(プロフ) - えりなさん» 分かんないことあったら、なんでも聞いてくださいねー! (2022年5月28日 10時) (レス) id: 7d04816b57 (このIDを非表示/違反報告)
えりな - わ〜‼初コメントありがとうございます! 占ツクで初めてです! 頑張っていきます! よろしくお願いします! 週4回更新していきたい…コメントありがとうございました! (2022年5月28日 10時) (レス) id: 97d1b5bb4a (このIDを非表示/違反報告)
水無月歌恋(プロフ) - 面白かったです。頑張ってください! (2022年5月28日 10時) (レス) @page1 id: 7d04816b57 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えりな | 作成日時:2022年5月28日 10時

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