あの子 ページ4
そんな夏休みのことだった。
私が図書館で本を見ていると彼と一緒に小さな女の子が来た。
まだ小学校低学年位の子だったが2人は手を繋いでいた。
女の子が指差した場所へ歩きながら彼がその子に笑顔で話しかける。
その表情であの子のことの大切さがわかってしまった。
彼にとってあの子は、優先順位が私より高いんだろうな、そう思ってしまった。彼に優先順位なんてないだろうのに。
「何考えてんの……私だってまだ中2でしょ……!」
図書館で小さく呟く。
彼は歳下の人の面倒見がいいだけか……なんて思ったりもした。
「あれ? りり?」
自分の好きな作者の本を手に取っていると後ろから声をかけられた。
「あ、幹久くん……」
先ほどの女の子と一緒だ。
「この子、中澤毬江ちゃん。今……9歳だっけ? 近所に住んでる幼なじみなんだ」
「そうなんだ……2人で図書館?」
「うん。実家に帰って毬江ちゃんに会ったら図書館行きたいって言われて。それ……りりの好きな本?」
幹久くんのその言葉で本好きの私たちの話が盛り上がってしまった。
我に返ったのは毬江ちゃんが突然「バカッ!」と、怒鳴ったからだ。
「毬江ちゃん?」
幹久くんではなく私に向けてだった。
その一言で勘付いた。
この子、幹久くんのことが好きなんだ、と。
ふざけなんかではなくだ。
身近な存在なのだから、気持ちが変わることはないだろう。
彼は……告白されたら、どうするだろう。
10歳下の女の子に告白されたら、どうするだろう。
毬江ちゃんは後ろを向いて走り出した。
「ごめん、りり。追いかけるよ。また夏休み明けにね!」
私は彼に小さく手を振った。
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水無月歌恋(プロフ) - えりなさん» いえいえー!応援してます! (2022年5月28日 20時) (レス) id: 7d04816b57 (このIDを非表示/違反報告)
えりな - ありがとうございます! めちゃくちゃ嬉しいです!(*≧∀≦*) (2022年5月28日 20時) (レス) id: 34d2333fb9 (このIDを非表示/違反報告)
水無月歌恋(プロフ) - えりなさん» 分かんないことあったら、なんでも聞いてくださいねー! (2022年5月28日 10時) (レス) id: 7d04816b57 (このIDを非表示/違反報告)
えりな - わ〜‼初コメントありがとうございます! 占ツクで初めてです! 頑張っていきます! よろしくお願いします! 週4回更新していきたい…コメントありがとうございました! (2022年5月28日 10時) (レス) id: 97d1b5bb4a (このIDを非表示/違反報告)
水無月歌恋(プロフ) - 面白かったです。頑張ってください! (2022年5月28日 10時) (レス) @page1 id: 7d04816b57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりな | 作成日時:2022年5月28日 10時