ウサギinウサギ ページ11
防衛部3年目、私達には部下がついた。
そして、騒ぎの発端となったのは堂上の部下だった。
「大変です堂上三正! 館内に爆弾が仕掛けられています!」
「事実か?」
「可能性は高いです!」
その大声を聞いて、何事かと私は声をかけた。
「どうしたの?」
「館内に爆弾があると。現場に案内しろ」
現場は利用者の多い女子トイレだった。
「これです!」
予備ペーパーなどを置く、タイル台の上にそれはあった。
グレーのウサギの人形。
中から秒針の音がする。
「どう見る?」
先ほど合流した幹久くんと私に問いかける。
「難しいね。あんな事件があっただけに」
「うん。見逃して爆弾だった場合も……ね?」
あんな事件、というのは百貨店のオモチャ売り場で愉快犯と思われる爆弾事件が起こり、爆弾をぬいぐるみに仕掛けて売り場に置く、というものだったのだ。
直近で爆発すれば死傷もあり得る程だ。
そしてまだ、犯人は捕まっていないのだ。
とりあえずぬいぐるみをネットで調べ、同じものを見つける。
リュックサック型で中身は空洞。
爆弾を仕込みやすい形であることは確かだ。
そして、この仕事は図書特殊部隊と共にすることになった。
防護服や液体窒素の扱いの指導を、受けているのは図書特殊部隊だけだからだ。
調べる人は玄田三監とのことだ。
「そんじゃ、まあ行くか!」
爆弾の有無を調べるとは思えない気軽な口調でトイレに入って行った。
「何だ、こりゃあ!」
中に入っていたのは単なるウサギの百均時計だった。
ウサギinウサギということである。
始末書ではなく報告書で済みそうだが……
「堂上、りり。わかってるだろうけど、俺たちにはまだこの事件終わってないよ」
「……うん」 「……ああ」
閉鎖を解いたばかりの図書館に親子連れが入ってきた。
「あのー、すみません。忘れ物を……」
母親が要件を述べる前に女の子がギャー!と泣き声をあげた。
「あたしのウサちゃんー!」
変わり果てた愛するウサギinウサギを母親より先に見つけたのだ。
玄田三監は堂上くんに防護服越しにウサギinウサギを握らせた。
「後は任せた」
母親も少し困惑気味だ。
「大変申し訳ありませんッ!」
堂上くんが45度の角度で頭を下げたのに倣って私達もそうする。
事情を説明し、何とか娘が帰ることを了承すると、堂上くんは部下の頭を張り倒した。
部下よりも歳下の私はなるべく出しゃばらない。
新しいぬいぐるみと時計は割り勘になった。
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水無月歌恋(プロフ) - えりなさん» いえいえー!応援してます! (2022年5月28日 20時) (レス) id: 7d04816b57 (このIDを非表示/違反報告)
えりな - ありがとうございます! めちゃくちゃ嬉しいです!(*≧∀≦*) (2022年5月28日 20時) (レス) id: 34d2333fb9 (このIDを非表示/違反報告)
水無月歌恋(プロフ) - えりなさん» 分かんないことあったら、なんでも聞いてくださいねー! (2022年5月28日 10時) (レス) id: 7d04816b57 (このIDを非表示/違反報告)
えりな - わ〜‼初コメントありがとうございます! 占ツクで初めてです! 頑張っていきます! よろしくお願いします! 週4回更新していきたい…コメントありがとうございました! (2022年5月28日 10時) (レス) id: 97d1b5bb4a (このIDを非表示/違反報告)
水無月歌恋(プロフ) - 面白かったです。頑張ってください! (2022年5月28日 10時) (レス) @page1 id: 7d04816b57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりな | 作成日時:2022年5月28日 10時