【文豪ストレイドッグス】もし、退屈なこの世界を抜け出して、大好きなあの世界に行けたなら……！

太宰さんに助けてもらってばかり ページ42

杉本巡査だけに聞こえるよう、こっそり耳打ちする。


『あの、痛いんですけど』


杉「……大人しくしててください」


静かにしていろと、腕の拘束を強められる。

それを無視して、誰も知らないはずの秘密を耳元で打ち明けた。


『動いたら私も撃つんですか？＿＿自分の彼女を殺したみたいに』


杉「何故それを！？」


杉本巡査が狼狽えた。

驚きで彼の目が見開かれる。

腕の拘束が微かに緩まった。

その隙をついて杉本巡査の拘束を無理矢理解いて抜け出す。


だが＿＿


ｼﾞｬｷｯ


『っ……！』


焦った杉本巡査が、私に銃口を向けて引き金を引くのが見えた。


＿＿ﾊﾞﾝｯ


辺りに大きな銃声が響いた。


『……？』


だが、痛みはいつまでも来ない。

その代わりに、杉本巡査の呻き声が聞こえた。


杉「離せ！僕は関係ない！」


その声に固く瞑っていた眼を開けると、杉本巡査が敦によって拘束され、地面に押しつけられていた。


『……え？』


乱「逃げても無駄だよ。犯行時刻は昨日の早朝。場所は＿＿」


『……え？あれ？』


撃たれて……ない？

訳が分からず混乱していると、太宰さんが話し掛けてきた。


太「大丈夫かい？」


『あ、はい』


太「危機一髪だったねぇ。私が敦君を押してなかったら、Aちゃん撃たれてたよ」


なんて、彼は呑気に笑う。


『えっと、……ありがとうございます』


太「なぁに、礼には及ばないさ」


キャー、イケメン。

推しの紳士さに心が辛くなった。


太「Aちゃん？乱歩さんたち移動するみたいだよ。行かないのかい？」


慌てて乱歩さんたちの方を見ると、杉本巡査を連行して何処かへ、恐らく警察署へ行こうとしているところだった。

『行きます』そう言って駆け出そうとした時、先程の恐怖が抜けていないのか、足元がふらついた。


『おわっ！？』


体制を立て直せずに、前のめりに倒れる。

地面と衝突する。そう思ったが、その時は来なかった。


太「っと、……大丈夫かい？」


『はい』


衝突寸前で、太宰さんが支えてくれた。


太「今日はボーッとしたり転けたりしてるけど、本当に大丈夫かい？」


心配そうに顔を覗き込んでくる。

うぅ、顔が近い。


『大丈夫ですよ、……早く行きましょう？置いて行かれますよ』


太「……そうだね、行こうか」

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