“人を救う側になれ” by織田作 ページ26
『さて、私達も探偵社に帰りましょうか』
よっこいしょと傷口を押さえながら立ち上がる。
少しふらついたが、探偵社まではもつだろう。
太「……え?あ、ああ、そうだね」
何故か、太宰さんが少し戸惑う様に返事を返す。
『どうしたんですか……?』
太「いや、なんでもないよ」
彼は何かを隠すように笑う。
『……そうですか。早く行きますよ』
そう言って歩き出そうとした時、太宰さんに呼び止められた。
何事かと思って彼を見ると、その表情は珍しく真剣で、
太「ねぇAちゃん。聞いてたよね、私の前職」
太宰さんの目から光が消える。
『太宰さんが元マフィアだったっていうことですか?』
太「うん、君は私がマフィアだったと知って、恐いと思った?恐ろしいと……思った?」
太宰さんは顔に笑顔を貼り付け、私へとにじり寄ってくる。
彼の貼り付けた笑顔の奥に、不安そうな幼い子供が見えた気がした。
『……正直、思いませんでした』
考えずとも、言葉が口を衝いて出た。
『元マフィアだとしても、今は探偵社で人助けをしているじゃないですか。太宰さんはもう、“人を殺す側”から、“人を救う側”になってるんです。何故恐がる必要があるんですか』
まず、太宰さんが元マフィアなの知ってたし。
太宰さんは目を少し見開き、驚いた顔をしている。
太「……ぷっ、あははは!」
太宰さんが急に愉快そうに笑い出した。
太「真逆そう言ってくれるとは思わなかったよ。__ありがとう」
その顔は少し曇りが晴れたようで、彼の変化に嬉しくなった。
『どういたしまして。……どうせ生きていくなら、人を殺すより救う方が幾分か素敵でしょう?』
太「っ!……あぁ、そうだね」
彼は何かを思い出す様に数秒だけ目を閉じた。
『却説、帰りますよ』
そう言って足を踏み出す。
太「あ、Aちゃん怪我してたけど、大丈夫?」
『大丈夫です、っ!?』
大丈夫だったつもりなのに、数歩歩いた先でぐらりと視界が揺らいだ。
倒れる寸前に太宰さんが抱きとめてくれる。
わぁ、太宰さんの匂いだ。なんて、呑気な事を思った。
太「っ!出血が酷い。良くこの状態で歩いて帰ろうだなんて思ったね」
傷口を見た彼は呆れたようにため息をついた。
『す、みま……せ……』
消えかける意識の中、彼の純粋な笑顔が最後に見えた。
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華月姫(プロフ) - ニーナさん» はい!時々見に来ますね(*'▽') (2017年6月16日 0時) (レス) id: f5f2dd91a6 (このIDを非表示/違反報告)
ニーナ(プロフ) - 華月姫さん» コメントありがとうございます!面白いと言ってくだって、とっっっても嬉しいです!少し更新が遅くなったりしますが、これからも投稿頑張ります!この作品をこれからも見守っていて下さい!宜しくお願いします! (2017年6月16日 0時) (レス) id: 15bf40c898 (このIDを非表示/違反報告)
華月姫(プロフ) - 最後に、これからも更新頑張ってくださいね!(^^)!応援してます!! (2017年6月15日 22時) (レス) id: f5f2dd91a6 (このIDを非表示/違反報告)
華月姫(プロフ) - イベント参加ありがとうございました!すみません、読むの遅くなってしまって・・・。お話読みましたが、とっても面白かったです!夢主ちゃんのツッコミが特に面白かったです(^^;)トリップものは最初からみんな知ってるのでいいですよね! (2017年6月15日 22時) (レス) id: f5f2dd91a6 (このIDを非表示/違反報告)
ニーナ(プロフ) - ちゅらさん» コメントありがとうございます!!最近投稿が疎かになっていてすいません。これからも応援よろしくお願いします! (2017年3月29日 14時) (レス) id: a9ef15ca11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニーナ | 作成日時:2016年11月16日 15時