25場 乱入 ページ29
「親睦会の日取りが取れたよー!」
男子更衣室の扉をバァン! と開け放ち、優芽が叫んだ。
「はぁ!? ちょっ……」
「何一丁前に照れてんのよ、誰もアンタ達の半裸なんざ興味ないっての」
脱ぎかけや着かけで焦る一同を鼻で笑って一蹴し、優芽は手に持っていたプリントに目を落とした。
「……相変わらずだね、優芽。せめてノックくらいしなよ。セクハラだぞ」
「残念だけどこの場合、悪くなるのは男子の方だよ。私が突撃したっていう証拠が明確な形で取れない限り、女の子を取り囲んで服を脱いでる図になっちゃう」
影夜の忠告(彼は着替えていない)にも半笑いで応じると、優芽は肩を竦めた。
影夜は溜め息を吐くと、苦々しい顔で言った。
「証拠も何も、此処は男子更衣室だ」
「あはは」
「……悪いね、こいつはこういう奴だから。本当に気にしてないっていうか……」
「言ってるでしょ、興味ないって。あたし、男には頼らないタイプだから」
「――らしいんだ。気にせず着替えてくれ」
とは言われてもやはり気になるので、脱ぎかけた者は急いで着直したり、着かけていた者は慌てて袖を通したりした。
「……本当に気にしなくていいのに」
一同を気遣う声音というよりそれはちょっと残念そうなもので、微妙な空気が流れる。
「まあいいや、ならさっさと用件だけ。親睦会の日程は来週末の土曜、午後6時から8時まで。アンシエントの許可はもう取ってあるから、練習は早めに終わらせて貰う手筈になってる。場所は――」
スラスラとプリントの内容やら注意事項を読み上げていく。
「――って感じだけど、質問は?」
「ないからさっさと出て行ってくれ」
「あはは」
半笑いで優芽が出て行くと、閉まったドアから声が聞こえた。
「あれ? 鈴音、どうし――うわ、ちょっ、待って、首、やめ、締まっ――」
着替えを再開した面々をぼんやり眺めながら、影夜は呟いた。
「怒らせたな……」
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作者名:月下 | 作成日時:2017年9月30日 23時