57話 ページ7
しかし、ルークは主張を曲げなかった
私を自主的に乗せるのを諦めたらしく、再び飛び上がったかと思うと私は彼の足に捕まえられていた
徐々に足が地面から離れゆく
『ルーク、まさかこのまま行くつもり？＿＿＿もう、分かった、ちゃんと乗るよ。…本当に、無理しないでね』
ルークの負担を成る可く減らす為にも大人しく乗った方が得策だと思い、そのまま彼の背にふわりと飛び乗る
ハリー達は…まだギリギリ見える
私が乗ったのを確認し、ルークは最大限にスピードを出して飛び始めた
セストラルは予想を遥かに超えるほどのスピードだった
けれどルークも負けてはいない
陽が落ち星が輝き出した頃、漸く建物が見えてきた
ハリー達はぎゅうぎゅうになって電話ボックスの中に入っている
ダイヤルを押している…
一緒に入るには間に合わなそうだから、ハリーが押したダイヤルをしっかりと目に焼き付ける
こういう時目が良いと本当に便利だ
ハリーが何か話したと思ったら、電話ボックスの中にいる皆が徐々に下へと下がっていった
魔法省ってここの地下にあるのかな…
完全に皆が消える直前、ほんの一瞬だけだけれど、
ハリーと目が合った気がした
…気のせいかな
私達も皆が居なくなったすぐ後に地上に降り立ち、電話ボックスに入って見ておいたダイヤルを押す
すると女の人の声が聞こえ、何とか受付を済ますことが出来た
こんなに簡単に誰でも入れていいものなのだろうか
何はともあれ、無事に魔法省へと入ることが出来た
電話ボックスから出て辺りを見回す
いくら夜だとは言え、こんなに誰も居ないものなの？
…やはり、ちょっと可笑しい
守衛室で杖を登録しろと言われたけれど、そんな暇はない
人の気配も無いし守衛室にも人がいない可能性も高いだろうし
兎に角早く皆に追いつかないと…
よく耳を澄ませて小さく反響する音を拾う
もう随分と離れているらしい
皆はエレベーターに乗ったのか、そのガチャガチャという音で何とか居場所を把握出来ただけだった
『確か、神秘部、だっけ。神秘部は＿９階ね』
ハリーが言っていたことを思い出し、案内を確認して９階のボタンを押す
「神秘部です」
受付をしてくれたのと同じ女性の声が静かに響く
松明の光のみで暗闇の広がる廊下を早足で歩く
取っ手のない黒い扉がパッと開かれた
皆この先にいるはず…
どうか、無事でいて
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作者名：葱 | 作成日時：2020年6月2日 19時
