線香花火×福沢諭吉 ページ7
とっぷりと日が暮れ、夜の訪れを感じる。どこかで蝉が鳴いている。夜ぐらい休めばいいと、語りかける。
福「1週間ぐらい、奴等の好きにさせてやれ。」
そういって、私の淹れたお茶をすする。今は1週間に一度、縁側に二人で並んで座り漫談する、貴重な時間。普段は社長が忙しくなかなか話す機会もない。だから、この時間が私の唯一の幸せの時間。
貴「ねぇ、社長?」
福「名前で良い。」
貴「じゃあ…諭吉さん。」
普段は絶対に呼べない名前で、呼び掛ける。
福「なんだ?」
貴「私、今日諭吉さんとしようと思って、持ってきたんです。」
コレ、といって差し出したのは、線香花火。火をつけると儚い光が灯り、その火を長く見続けられるかは自分次第、というアレ。
福「…線香花火か。久しくやっていない。」
貴「私も、です。子供の頃以来ですかね。」
はい、と一本手渡す。
貴「どちらが長くつけていられるか、勝負しませんか?」
福「面白い、やろう。」
じゃあ、いきますよ?と。二人同時に点火する。
じっと揺れる線香花火を見つめる。二人共何も喋らない。蝉の声と、諭吉さんの呼吸だけがしばらく響く。
貴「あっ…!」
私の線香花火が先に落ちる。
福「動くから悪いのだ。じっとしていれば落ちることはない。」
そういっている諭吉さんを見ると、まだついたまま。
貴「むぅ…。もう一本やります。」
そういって新しいものを取りだし、点火。また会話が途切れる。
訪れる静寂。
でも、その静けさは全く苦では無く。寧ろ…、
貴「…幸せです。」
福「…そうか。」
諭吉さんは、私もだ、とふっと微笑して、私に近づく。
そして…
ちゅっ
優しく、口付けた。
その衝撃で花火が落ちるが、気になどしていないという風に、もう一度、軽く口付ける。
私は再び、
貴「…幸せです。」
と口にした。
線香花火の香りと蝉の声、私たちが重なる音だけが響いている、そんな夜だった。
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紫杏 - ナオ▼さん>お褒めいただき、ありがとうございます…!実は私も福沢さんのやつは結構気に入ってて…(照)この作品は終わりにしてしまいましたが、今後とも紫杏をよろしくお願いします。 (2017年1月7日 15時) (レス) id: 31d6c79ecc (このIDを非表示/違反報告)
ナオ▼ - めっちゃキュンキュンしました!特に福沢さんと森さんの話が大人な感じで素敵でした(*´>ω<`) (2017年1月6日 15時) (レス) id: d611bd726f (このIDを非表示/違反報告)
紫杏 - カナデ♪さん:本当ですか!?ありがとうございます!! 更新さぼって申し訳ありませんでした。また頑張るのでこれからもよろしくお願いします。 (2016年8月22日 0時) (レス) id: 31d6c79ecc (このIDを非表示/違反報告)
カナデ♪(プロフ) - 森さんにキュンとしてしまいました…他の方にももちろんキュンとしました。とっても楽しめました! (2016年8月11日 9時) (レス) id: a56cb588ef (このIDを非表示/違反報告)
紫杏 - よかったら、評価や感想等々よろしくお願いします! (2016年7月22日 11時) (レス) id: 31d6c79ecc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫杏 | 作成日時:2016年7月7日 23時