【文スト】氷菓と花火に、夏色列車【短編集】

蝉×中島敦 ページ2

ミーンミーンミーン

最近暑い。うだるような暑さが続いている。そんな中仕事なんかできるわけもなく。現在私Aはぽーっと窓を眺めているわけです。

敦「まぁーった蝉みてるの？飽きない？」
貴「…やぁ、敦君か。お仕事ご苦労様。うーん、蝉を見てると生きてるって実感できるから飽きないかな」

そのまま窓の外を見つめながら適当に答える。すると、少しして呆れたように、

敦「これ、Aちゃんの分の仕事も混ざってるんだけどなぁ…」

なんて呟きが聞こえてきたが、あえて無視すると、

敦「まぁいいや。ところでなんで蝉を見てると生きてるって実感するの？」

なんて溜め息混じりに聞いてくる。そんな敦君がかわいくて、ついふっと口許を緩ませてしまう。

貴「だって蝉って１週間しか生きられないんでしょ？その生きられる期間を一生懸命鳴くだけで過ごしている蝉を見ると、なんか自分が呼吸できてることを実感できるというか。ね？」

わっかんないかなあ…と言えば、

敦「うーん、相変わらずAちゃんの言うことは難しいなあ…。でもなんとなく皮肉っぽいこと言ってるのはわかったよ。」

と返してくる。ほう、わかってるじゃないか。

あっ、でも…と敦君。
何？と首をかしげれば、

敦「でも、生きてるって実感したいなら…」

チュッ

敦「これでいいじゃん！ね？」


……きっと今の私の体温は、外の気温よりずうっと高い。

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