青春 (ページ22)

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『おーおー、馬鹿田じゃんかー』

大我「 A、下がれ」

「さゆりんこっち！」

大我から少し距離を取ってさゆりんを隠すように立った

『でも戦力外かよー、』

『女みてーな顔して』

『黙ってスカートでも履いて女らしくしてろ！』

大我「 …………女じゃねぇ、女じゃねーって何回言ったらわかんだよ！！！」

相手の挑発に大我は火がついたように走り出す

ただ静かに様子を見守るわたしたち
不意にわたしの手がぎゅっと握られた

「さゆりん？怖い？」

小百合「違う。Aもああやってわたしを守ってくれたなって」

「まあ、あそこまで派手ではないけどね」

小百合「でも殴ってた」

「やむを得ず」

小百合「わたし、Aが羨ましい。やりたいこと、自由にできて素敵な仲間に囲まれて楽しそう」

「 …………そんなふうに、見えてるんだ」

それじゃ、本当のことを知ったらびっくりしちゃうね。
可哀想な子だっておもわれて、同情の気持ちを抱えながらわたしに接するようになるのかな。

そうおもったら、やっぱり本当のことなんて言えない

大我「っ、ふざけんじゃねーよ」

あっさりと終わった喧嘩はもちろん大我の勝ち

さゆりんはわたしの手を握ったまま歩き出して、慌てたように大我も後ろを着いてくる

小百合「 …………大丈夫なの？」

大我「うん」

小百合「ふーん。意外と強いんだ」

そう言って急にさゆりんが歩く足を止める
ゆっくりとわたしの方に体を向けて、もう片方の手も握った

小百合「さっきの返事、聞かせて？」

「さゆりん、何があったの？」

小百合「 ……Aがなにも教えてくれないならわたしも言わない。だから答えだけ聞かせて」

「いいよ、それでさゆりんの気が済むなら。…………一緒に死のうか」

無意識にぐっと手を握る力が強くなる

ああ、この子は本気なんだって伝わってきて体が強ばった

大我「 ……どこ行くの」

「学校、でいい？」

小百合「うん」

3人もいて、誰も喋らないこの状況で何度もさっきの言葉が頭の中をループする

でもね、さゆりん。
絶対死なせないから。わたしのことを親友だとおもってくれなくても、絶対に止めるから。