男のフリして歌ってます2【歌い手】

54─過去編 ページ10

私は、一般的に″可哀想な子″だと思う。



中学生の頃に家族旅行へ行った。




その時、飛行機で事故が起こり、自分以外の家族が、命を落とした。





『なんで、私は。私だけが、生きてるの？私だけが生きてる必要って、あるの？』


どうして私だけが助かってるの？







「Aは、生きてていいんだよ。俺にとってお前は、大切なんだよ＿＿＿。」



初めて生きる意味を探した日。

こんなに、人に救われたと思った日。




『ありがとう....！』


こんなに感謝した日。









そして私は、養子となった。


私を引き取ってくれた人は、とても優しかった。

優しくて、少し、心の距離があった。



怒られた事もない。



怒られたいって訳じゃないよ？
でも、ヨソヨソしさが残ってる。


悪いことじゃないのかもしれないけど。



私が、″お母さん、お父さん″って呼べてないせいもあるけど。



いつも呼ぶときは、裕美さん。秀司さん。って呼んでるから。





そしてある日。


裕美「Aちゃん、歌って好き？」



思わぬチャンスだった。

私も歌が大好きだから、二人と趣味が合うなんて思ってなかったから。





『はい。大好きです！』



裕美「あら、そうなの。私も歌、好きなのよ。Aちゃん、声がきれいだから、歌ってみると上手かな？っておもったの。」



私が歌う？

これってチャンスじゃない？




『はい！歌うの好きです！！裕美さん、好きな曲ありますか？』



裕美「そうね、あ！あれが良いですね。空の願いっていう曲です！」




『え..？』



空の願い


私が、よく知ってる曲。


あの旅行の時、みんなで歌ったやつだから。

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